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 アントニイ・バークリーが本名のA・B・コックス名義で書いた『プリーストリー氏の問題』を読む。
 バークリーの邦訳で唯一未読だった作品なのだが、別に大事にとっておいたわけではなく、積ん読山脈に紛れて行方不明だったものがようやく見つかって読んだ次第。奥付をみると2004年刊行なので、十五年も積んでいたことになる。我ながら呆れてしまったが、まあ、本読みにはよくあることか。

 こんな話。プリーストリー氏は三十六歳の独身男性。好人物でお金に恵まれ、身の回りの世話をしてくれる従僕もいて、快適な生活を満喫していた。しかし、最近婚約したばかりの友人ドイルは、そんなプリーストリーの隠居然とした覇気のない生活に異議を唱える。
「君はキャベツだ!蕪野郎だ!ペポカボチャだ!」
 そんなある日。ドイルは婚約者のドーラと共に、ドーラの友人・シンシアとその夫・ガイのホームパーティに招かれる。ドイルとガイは、犯罪心理の話で意気投合し、ある実験を企むことにする。
 一方のプリーストリー氏はドイルの言葉がついつい気になり、日常から少しだけはみ出そうと、街へ繰り出す。すると見知らぬ美女と出会ったことから、ある犯罪に巻き込まれてしまい、挙げ句には美女と手錠でつながれたまま逃げ回る羽目に……。

 プリーストリー氏の問題

 犯罪を扱ってはいるが、純粋なミステリではなく、クライム・コメディといったところ。
 主人公のプリーストリー氏は基本的には好ましい男性だが、冒険心に欠け、変化を好まない。そんな彼に刺激を与えてやろうと友人たちが悪だくみを企て、その結果、主人公がひとつの冒険を乗り越えて、人生の転機を迎える様子がユーモアたっぷりに描かれる。
 ブラックユーモアというほどではないが、上流階級に対する皮肉な見方が随所に感じられ、登場人物のやりとりも適度にふざけ、適度に洒落ていて好ましい。いかにもなラブロマンスもうまくブレンドされていて、しいていえば昔のハリウッド映画にあるような、小粋な雰囲気を堪能できる。
 本作は比較的初期の作品で、のちの作品ほど尖ったところはないけれど、全体として非常にバランスのよい、楽しい作品といえるだろう。

 また、純粋なミステリではないけれども、ドイルとガイが悪だくみを考えていくあたりはちょっと面白い。倒叙ミステリというのとは違うけれど、それらしい犯罪を組み上げていく過程は、もしかするとバークリー自身がこういう創作法をとっていたのかと想像することもできて興味深いところだ。

 ただ、先にも書いたように決してミステリといえる作品ではないので、他のバークリーのミステリを期待するとちょっとアテが外れるけれども、これはこれでありだし、ファンであればやはり読んでおきたい一作である。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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