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 ハーマン・ランドンの『怪奇な屋敷』を読む。
 ちょうど一ヶ月ほど前に、同じ論創海外ミステリから出ている『灰色の魔法』を読んだのだけれど、そちらは活劇を中心とした怪盗ものシリーズの一作。ミステリではあるが謎解き要素は少なく、キャラクターとストーリーで読ませるストレートなエンタメという印象だった。
 一方、本作は帯に“本格密室推理小説”という文字が踊って期待を煽るが、なんせすでに『灰色の魔法』を読んでいる身としては、やや眉唾に感じられたりもするわけで(苦笑)、それほど期待せずに読み始める。

 こんな話。ニューヨークのホテルに現れたみすぼらしい身なりの青年、ドナルド・チャドマー。彼こそ長い間、消息不明だったチャドマー家の次の後継だった。家を飛び出し、さまざまな仕事を転々とし、ついには暴力沙汰からの刑務所暮らしを経て帰ってきたのだ。
 ただし、ドナルドが戻るべき屋敷は、不吉なことが起こると評判の屋敷であった。歴代当主も次々と財産を失う羽目に陥り、その屋敷のみが財産のすべてであった。そんな彼をつけ狙う謎の男たちも現れるが、なんとか危機を切り抜け、ようやく屋敷にたどり着く。
 しかし、ドナルドの叔父で、現在の屋敷の主人でもあるセオドアが、不可解な状況で殺害される……。

 怪奇な屋敷

 一応は“本格密室推理小説”という謳い文句を信じつつ読み始めたが、のっけから冒険活劇小説風の展開。この時点でやはりランドンは本格を書く気がないと確信するが、その後、殺人事件が発生するとかなりそれっぽい展開になるため、「これはもしかすると」と考え直す。
 だが、しょせんぬか喜び。本格のコードを踏まえているようで、実はかなり緩い書き方をしているため、本格としての満足感を得ることはできなかった。
 本作が発表されたのは1928年。英米ミステリの黄金時代ではあるのだが、その影響を受けつつも、やはりランドンの興味はストーリーやキャラクターにあるのだろう。また、極論をいえば、真犯人の設定、殺害方法、登場人物の言動などから察するに、ランドンは肝心なところで本格推理小説としての肝を理解していない節がうかがえる。
 これも極論になるが、要は著者のセンスの問題だろう。オカルト的な雰囲気、謎のポイントなど、書く人が書けばそれなりにちゃんとした本格になるはずだが、ランドンは結局そちら側の人ではなかったということだ。

 ただし、本格云々を脇に置いておけば、本作はそれなりに面白い。『灰色の魔法』などを見てもわかるようにストーリーの盛り上げなどは達者である。特に本作では探偵役の候補者が複数いて、それが徐々に絞られてくる展開は当時では珍しいパターンでちょっと興味深い。
 当時のエンタメとしてみれば充分、及第点に達しているのではないだろうか。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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