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 ちょっと面白そうな本が出ていたので買ってみた。『みうらじゅんの松本清張ファンブック 清張地獄八景』である。松本清張生誕110年を記念して編まれたガイドブックだが、編者が文学畑の人ではなく、イラストレーターであり、いくつものニッチなマイブームをもつみうらじゅん氏ということで、他の類似本とはさすがに一味違ったものになっている。

 みうらじゅんの松本清張ファンブック 清張地獄八景

 第一章 崖
 第二章 小説
 第三章 人間・松本清張
 第四章 映像

 目次はこんな感じだが、異色なのはやはり「第一章 崖」だろう。
 二時間サスペンスなどでおなじみの、追う者、追われる者が最後に立ち尽くす、あの“崖”である。その“崖”の佇まいに魅了されたみうらじゅんが、“崖”シーンのルーツともいえる『ゼロの焦点』に登場した能登金剛「ヤセの断崖」を語る一章。
 まあ、ぶっちゃけ一章を費やすような内容ではないけれど(笑)、「二時間サスペンスドラマの帝王」の異名を持つ船越英一郎との対談はなかなか面白い。

 まあ、第一章はともかくとして、それ以後は比較的オーソドックスな構成で、それぞれのテーマに沿ったコラム等を集めている。
 清張作品の魅力は、ミステリーとしての要素、社会問題を扱う時事性、リアルな世界観、端正な文体など、いろいろな面があるのだが、みうらじゅんが特に重きを置くのは、人間の普遍的な弱さだ。
 人間の業といってもいいのかもしれない。野心や功名心、独占欲など、人間が生きている限りまとわりつく、こうしたドロドロの部分を清張はリアルに描く。弱い人間が日常から踏み外す、そうした瞬間が堪らないといい、これを「清張ボタンを押す」と表現する。さらにはそこに同情心を盛り込むことなく、それによって転落し、破滅する姿を容赦なく描くのも、清張ならではの因果応報の世界であり、これもまた魅了されるところだという。

 本書はみうらじゅんのそんなフィルターを通してまとめられた松本清張に関するエッセイやコラム集といってもいいだろう。
 ただ、基本的には楽しく読めるのだが、残念ながら目新しいところは特にない。というのも収録原稿のほとんどが再録であり、本書のための書き下ろしはほぼないからである。内容自体はいいのだが、企画はけっこう安易なところが残念な一冊であった。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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