この週末はいくつかミステリ関係で片付けておきたい宿題があって、そのひとつが世田谷文学館で開催されているコレクション展「仁木悦子の肖像」。京王線で芦花公園駅下車、歩いて五、六分というところなので、いつもなら大した距離ではないのだが、この暑さでは辛い。あっという間に汗だくになって世田谷文学館到着である。
世田谷文学館といえば単なる文学におさまらず、映像や漫画、サブカルに至るまで、幅広い芸術を積極的に扱うことで知られているが、それでも仁木悦子の展示会とはなかなかやってくれる。
もちろん仁木悦子の業績については今さら説明するまでもない。優れた作家というだけでなく、大きな病気によるハンディを背負いながら、日本に「推理小説」を広く定着させた功労者として、日本のミステリ史に欠かせない人物である。
しかしながら、当時はともかく、今では一般的な知名度はそこまであるわけではない。というか彼女の業績を知らしめるようなイベントはこれまでもほとんどなかったはずで、そういう意味でも今回のコレクション展は実に意義のあることだろう。
規模的にはそれほど大きなものではなかったが、推理作家・仁木悦子としての業績、童話作家・大井三重子としての業績、兄を失った戦争関連の記録、そして寺山修司との交友記録とけっこう盛りだくさん。コンパクトゆえ、かえって展示物をじっくり見ることができて、結果的にはこれぐらいの規模でちょうどいいのかもしれないと思った次第。
個人的にもっとも興味深かったのが創作ノートの類。特にプロットは、登場人物ごとに時系列でチャート化されており思わずニヤリ。まさにミステリ作家のプロット作りのお手本のようであり、これを見れたのは大きな収穫だった。

▲中は残念ながら撮影禁止だが、入り口で猫がお出迎え。

▲無料のパンフレット。変形版でB5にして4ページ相当。

▲中はこんな感じ。展示もされていた日下三蔵氏による紹介文が全文載っているのが目を引く。
というわけで会期は来月9月23日までということなので、興味のある方はぜひどうぞ。
ちなみに10月からは「小松左京 展」とのこと。これまた楽しみである。