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 早くも大晦日である。相変わらず一年が光速のごとく過ぎ去り、若い頃ならそれが楽しくもあるのだが、まあ、この年になると、あそこが痛いここが痛いと年がら年中体調も悪く、おまけに老眼も進んで、就寝前の読書がなかなか捗らず、つくづく年はとりたくないと思う今日この頃である。

 まあ、そんなことはどうでもよい。「探偵小説三昧」の大晦日といえば「極私的ベストテン」の発表である。
 今年の読書傾向は、ここ数年進めている昭和の推理作家のさらなる消化。今年は特に泡坂妻夫を攻めてみたが、再読もけっこうあったのだけれど、いや、あらためて泡坂作品の楽しさを痛感した。もう万人に自信をもっておすすめできる超優良作家である(何をいまさら)。
 もうひとつは同人系の復刻本や評論をかなり読んだことか。マニアックすぎて商業出版では成立しない企画が多く、それがことごとく管理人のツボを突いてくるものだから、今年はかなり読んでいるはず。どうしても製本上や校正といった部分で厳しいところはあるけれど、その熱量と内容の濃さは出版社顔負けであった。

 さあ、それでは「極私的ベストテン」。
 管理人が今年読んだ小説の中から、刊行年海外国内ジャンル等一切不問でベストテンを選んだ結果がこちら。

1位 フェルディナント・フォン・シーラッハ『刑罰』(東京創元社)
2位 ロス・マクドナルド『ウィチャリー家の女』(ハヤカワ文庫)
3位 陸秋槎『元年春之祭』(ハヤカワミステリ)
4位 ジャック・フットレル『思考機械【完全版】第1巻』(作品社)
5位 泡坂妻夫『花嫁のさけび』(河出文庫)
6位 アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』(創元推理文庫)
7位 山尾悠子『歪み真珠』(ちくま文庫)
8位 夏樹静子『77便に何が起きたか』(中公文庫)
9位 陳浩基『ディオゲネス変奏曲』(ハヤカワミステリ)
10位 アーナルデュル・インドリダソン『厳寒の町』(東京創元社)


 今年は評判になった新作も比較的読んだせいか、かなりセレクトに苦労した。その中で1位に推したのは
フェルディナント・フォン・シーラッハの『刑罰』。最近は長編が多かったが、この人、やっぱり短編のほうが圧倒的によい。久々に『犯罪』の興奮が蘇った。

 2位はぼちぼち全作読破を進めているロスマクから『ウィチャリー家の女』。『ギャルトン事件』『ファーガスン事件』もよかったが、やはり後期ロスマクのほぼ完成形であり、ハードボイルドとか関係なくもっと読まれてほしい一冊だ。

 3位は単なる中国を舞台にしたミステリではなく、中国の歴史や設定を極限まで生かした傑作。やや好き嫌いは出るだろうが、ミステリとしてのレベルは尋常ではない。

 読みたてほやほやの『思考機械【完全版】第1巻』は4位で。内容というよりも本の企画、解説、造本など含めて素晴らしかった。

 5位は泡坂枠で。もちろん『乱れからくり』『11枚のトランプ』『亜愛一郎の狼狽』『湖底のまつり』『迷蝶の島』という選択肢もあって、「正直、全部ベストテン入れたろか」とも思ったが、さすがにそれは自制。知名度的には落ちるがアイディアが面白い『花嫁のさけび』をあえてチョイス。

 話題のホロヴィッツは今年もベストテンを席巻した。個人的には『カササギ殺人事件』よりもこっちが好み。まあ、探偵小説三昧での順位は下がったけれど、これは今年の方がレベルが高かったということだろう。

 幻想小説もいくつか読んだが、『歪み真珠』はイメージの豊かさに感動する。しかも文章の美しいこと。論理が決着をつける小説を多く読んでいると、たまに読む幻想小説の感動がより大きくなるのはミステリ読みの特権といえるのではないだろうか。

 8位は夏樹静子の短編集。全体的に楽しめるが、なかでも表題作のインパクトは絶大で、これは必読レベル。

 9位も短編集だが、けっこう収録作にムラはあるものの、単純に楽しめる作品が多くて満足。『13・67』の印象しかなかったので、こういうものも書いていたのかという新鮮さもあり。

 北欧ミステリはそれほど読んでいないが、このシリーズは好み。もっと上位にあげたいのだが、ミステリとしての弱さがちょっと響いてこの位置で。


 以上が「探偵小説三昧」の「極私的ベストテン2019」。
 なお、再読&メジャーすぎる作品なのであえてベストテンから外したものとして、坂口安吾『不連続殺人事件』結城昌治『ゴメスの名はゴメス』がある。こちらは当ブログのベストテン関係なく必読作品なのでよろしく。
 その他にもランクインさせたかった作品としては、先にあげた泡坂作品やロスマク作品、ケイト・モートン『忘れられた花園(上・下)』ジョン・ロード『クラヴァートンの謎』ドット・ハチソン『蝶のいた庭』R・オースティン・フリーマン『キャッツ・アイ』河野典生『陽光の下、若者は死ぬ』ジョルジュ・シムノン『ブーベ氏の埋葬』ローレンス・ブロック『泥棒はスプーンを数える』スチュアート・タートン『イヴリン嬢は七回殺される』。このあたりはお好みでどうぞ。

 また同人誌では、森脇晃、森咲郭公鳥、kashiba@猟奇の鉄人『Murder, She Drew Vol.1 Beware of Fen』kazuou『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』さかえたかし『赤川次郎アーリーデイズvol.1』は良書。マニアックなものからガイド的なものまで様々なアプローチ。三者三様だが、どれも楽しめた。
 また、抄訳ながら復刻版のルーファス・キング『深海の殺人』は悪くない。これはぜひ論創社あたりから完訳で出してもらえると嬉しい一冊である。

 ということで今年の「探偵小説三昧」の更新はこれにて終了。
 本年も大変お世話になりました。また、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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 本日の読了本はジャック・フットレルの『思考機械【完全版】第1巻』。もっと早く読みたかったが、なんせ凶悪なほどの厚さとサイズ。電車通勤の身には、どうしても普段は重くて持ち歩けない本なので、この年末年始の休みは絶好の読了機会である。なんせこの時期を逃すと、次に読める機会はゴールデンウィークになるのでもう必死に読み終える。

 思考機械【完全版】第1巻

 本書はジャック・フットレルが生んだ名探偵・思考機械ことオーガスタス・S・F・X・ヴァン・デューセン教授の登場する作品を全2巻にまとめたうちの第1巻。単行本未収録作を含め、思考機械シリーズ作品がこの二冊ですべて読めるだけでも十分素晴らしいが、なんと雑誌初出時と単行本収録時の異動や英米版の差異も注釈でフォロー、雑誌の挿絵も豊富に入っているなど、恐ろしいほどの念の入りようである。
 思考機械の短編集といえば、これまでは創元推理文庫『思考機械の事件簿』全3巻が定番だったが、もう本書以上のものは出せないだろう。
 これらはすべて訳者である平山雄一氏の研究の成果だが、この方、基本はシャーロキアンのはずだが、同じ作品社の『隅の老人【完全版】』をはじめとして他にも多くのクラシックミステリを翻訳するほか、自身のヒラヤマ探偵文庫という叢書も手がけ、おまけに明智小五郎にも造詣が深い。ちゃんとした本業があるのに、よくこんなにいろいろできるものだなぁといつも感心している次第。

The Problem of Cell 13「十三号独房の問題」
The Ralston Bank Burglary「ラルストン銀行強盗事件」
The Flaming Phantom「燃え上がる幽霊」
The Great Auto Mystery「大型自動車の謎」
Kidnapped Baby Blake, Millionare「百万長者の赤ん坊ブレークちゃん、誘拐される」
The Mystery of a Studio「アトリエの謎」
The Scarlet Thread「赤い糸」
The Man Who was Lost「「記憶を失った男」の奇妙な事件」
The Golden Dagger「黄金の短剣の謎」
The Fatal Cipher「命にかかわる暗号」
The Grip of Death「絞殺」
The Thinking Machine「思考機械」
Dressing Room A「楽屋「A」号室」
The Chase of the Golden Plate「黄金の皿を追って」
Problem of the Motor Boat「モーターボート」
A Piece of String「紐切れ」
The Crystal Gazer「水晶占い師」
The Roswell Tiara「ロズウェル家のティアラ」
The Lost Radium「行方不明のラジウム」

 収録作は以上。
 比べるのも何だが、『隅の老人【完全版】』よりも満足度は高い。思考機械のほうがミステリとしての結構がしっかりしている印象であり、ストーリーも動きがあって面白い。もちろん、書かれた時代ゆえ傑作揃いというわけにはいかないが、いわゆる「ツカミはOK」なのですぐに物語に引きこまれる。隅の老人は語りでストーリーが進むので、その点がちょっと物足りないのである。
 ただ、隅の老人のためにフォローもしておくと(笑)、キャラクターの立ち方ではミステリアスな魅力で隅の老人に軍配をあげたい。思考機械もキャラクターは十分立っているが、エキセントリックな天才型探偵は割とすぐに思いつく設定で、このあたりは歴史小説も多く書いたオルツィの上手さが出ているのかも。
 まあ、この辺はあくまで個人的な意見なので、あまり気にしないでほしいけれど(苦笑)。

 ということで何とか年内に第1巻が読めてひと安心。続けて第2巻はさすがに飽きてくるので、これはそれこそゴールデンウィークかな。


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 昨日が仕事納めで本日より九連休。久しぶりの長い休みで、それはそれで嬉しいのだけれど、けっこう昨日も仕事がいっぱいいっぱいで気になることが山積み。鬱々と休みに突入しつつ、本日はとりあえず大掃除で体を動かしてなるべく頭を使わないようにする。そしてもちろん読書。


 ローレンス・ブロックの『泥棒はスプーンを数える』を読む。
 こんな話。古書店を営みながら泥棒稼業にも精を出すバーニイ・ローデンバー。彼の元へスミスと名乗る男が現れ、博物館からフィッツジェラルドの生原稿を盗んでほしいと依頼される。難なくその仕事をこなすと、その依頼人からまたしても次の依頼が。ただし、その難度は非常に高く、一度はあきらめかけたバーニイだったが……。
 そんなおり、バーニイの元へ今度はニューヨーク市警のレイ刑事が現れた。こちらはある老婦人の殺害事件の捜査に協力してほしいというものだった。

 泥棒はスプーンを数える

 本作はいまのところ泥棒バーニイ・ローデンバー・シリーズ最後の作品である。また、これが管理人にとって唯一の未読ブロック作品なので、これまでもったいなくて読まずにとっておいたのだが、ついに欲望に負けて読んでしまった。
 もちろんその期待は裏切られることなく、ブロックの語りを十分堪能できた。

 もともとローレンス・ブロックはストーリーの面白さよりも、その語りの巧さを評価されてきた作家である。晩年の作品は特にそれが顕著で、基本的にストーリーはそれほど大したことがなく、バーニイの語りやレギュラーたちの会話が読みどころといってよい。
 ただ、語りの巧さにもいろいろある。格調高い美文とか技巧を尽くした文体とか味わい深い文章とか。ブロックのそれはユーモアに彩られた含蓄のある文章とでもいおうか。酒場や書店で繰り広げられる何気ない会話のなかに、思わずニヤッとする真理が隠されていたりする。その語りに身を委ねるかのように読む。これがブロックの最近の作品を楽しむコツだろう。

 ユーモアの度合いは異なるが、これはアル中探偵マット・スカダーものや殺し屋ケラーものでも同様。しかし、その魅力がもっとも発揮されるのは、何といってもバーニイ・ローデンバー・シリーズであり、古書店という設定ゆえの文学ネタなどが豊富に盛り込まれているのもより効果をあげている。本作でもフィッツジェラルドやマイクル・コナリーなど、ここかしこに実在の作家名を出しており実に楽しい。
 まあ、ストーリーありきで読む読者には物足りないところはあるだろうが、それでもラストの関係者全員を集めての謎解きシーンやどんでん返しはお見事で、さすが巨匠の筆は冴えている。

 ちなみに現時点で本作はバーニイ・ローデンバー・シリーズの最後の作品だが、どうやら来年には本国で短編集が出るようで、これはぜひ邦訳が出てほしいものだ。


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 フェルディナント・フォン・シーラッハの短編集『刑罰』を読む。まずは収録作。

Die Schöffin「参審員」
Die falsche Seite「逆さ」
Ein hellblauer Tag「青く晴れた日」
Lydia「リュディア」
Nachbarn「隣人」
Der kleine Mann「小男」
Der Taucher「ダイバー」
Stinkefisch「臭い魚」
Das Seehaus「湖畔邸」
Subotnik「奉仕活動(スポートニク)」
Tennis「テニス」
Der Freund「友人」

 刑罰

 シーラッハのデビュー作『犯罪』は実に衝撃的だった。続く『罪悪』もそれに勝るとも劣らない傑作で、その後に発表された長編も問題作だらけ。弁護士という本職を活かした作品、といえば何となくわかったような気になるけれど、実際に読んでみるとそんな単純なものではない。

 犯罪の陰に潜むさまざまな人間の営み、あるいは法律では救われない人間の業。合理的に割り切ることができない人間の闇、この不条理で残酷な世界を、シーラッハは事件を通して淡々と描いてゆく。
 そう、あくまでシーラッハはその事実を伝えるだけで、そこにどんな意味があるか、正義は遂行されたのか、断言することがない。だから中にはかなりモヤモヤの残る作品も少なくないのだけれど、だからこそ読者はがっつり登場人物の心について向き合わなければならず、善悪とは何なのか考えなければならないのだ。

 ただ、シーラッハは突き放すだけではない。作品はどれも大したボリュームはないのに、彼または彼女の半生を描くことで、犯罪者の動機や背景を読み解くヒントも与えてくれる。シーラッハの短編はどれも本当に短い作品ばかりだが、そういった前振りを惜しげもなく盛り込ことで、短いながらも長編に負けないぐらいのコクを生むのである。
 シーラッハの作品にとてつもなく惹きつけられてしまうのは、そんなところにも秘密があるのかもしれない。

 文章も相変わらず削げるだけ削いだキレッキレのシンプル描写。この一見、淡々とした文章があるから、事実がより鮮明に浮かび上がっているわけで、これは訳者の酒寄氏の力もかなり大きいだろう。

 ということで本作も圧倒的な傑作。このところ長編が多かったけれど、やはりシーラッハは短編にかぎる。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 本日の読了本は久々にアートブック。といっても大がかりなものではなく、河出書房新社から〈らんぷの本〉の一冊として刊行されている手軽なタイプだ。ただし、中身の方は手軽どころか、極めて濃いめであり、けっこうな毒気に当てられてしまった。
 ものは『魔性の女 挿絵集』。管理人が買ったのは元版ではなく、今年出た新装版である。カバー絵が変わったほか、旧版の岩田専太郎が月岡夕美に差し替えられているようだ。

 魔性の女挿絵集

 ところで、この本の元になっているのが、2013年に東京の弥生美術館で開催された「魔性の女 挿絵(イラストレーション)展」である。編著者も弥生美術館の学芸員の方だ。内容ももちろんその展示物を紹介したものになるのだが、おそらくは当時、図録的に発刊されたものと思われる。
 ちなみに出版社が美術展などに便乗して本を出すのはよくあることだが、当の美術館スタッフが図録としてではなく、普通の商業本として本を出すのはけっこう珍しい。この手を使うのは管理人が知っているかぎり弥生美術館だけなのだけれど、ここは出版社とけっこうなパイプがあるのか、それとも売り込みが上手いやり手の営業マンがいるのか、気になるところである。

 まあ、それはともかく。
 本編の話をすると、明治から昭和初期の文学や雑誌を彩った挿絵の数々。その中から「魔性の女」にスポットを当てたのが本書である。

 いつの時代に合っても、“魔性の女”は独特の魅力をもっているけれど、この時代に描かれる“魔性の女”は格別だ。昭和初期はエログロナンセンスの時代とも呼ばれるが、それが戦争や震災からの復興や景気回復、そして明治以後に押し寄せた西欧文化の影響もあることは間違いないところ。
 都市は再び繁栄し、人々の生活は安定する。その結果、日本人はようやく人間の内面に目を向ける余裕が生まれ、心のなかに潜む悪意や狂気、エロティシズムを表現するようになったのだ。

 たとえば泉鏡花「高野聖」の女、たとえば谷崎潤一郎「痴人の愛」のナオミ、さらには九尾の狐が化身した玉藻の前といった人外に至るまで、その妖艶な姿の数々を本書で味わうことができる。
 画家としては橘小夢、水島爾保布、河野通勢、小村雪岱、名越國三郎、竹中英太郎、蕗谷虹児、高畠華宵、山六郎、林唯一、月岡夕美、内藤良治といったところが採られ、ボリューム的にも圧巻。
 ついでにいえば戦前の探偵小説好きには、やはり乱歩の『黒蜥蜴』や横溝正史の『鬼火』が見逃せないところだろう。乱歩なら個人的には「お勢登場」のお勢いも見てみたかったところである。

 唯一残念だったのは、2013年に行われたこの展示会を見逃したことだ。いずれそういう機会を来ることを望みつつ、本日はこの辺で。


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 HIBK派の元祖として知られるメアリー・ロバーツ・ラインハートなので、その作品はサスペンスやロマンスを基調とした単発作品と思われがちだが、シリーズ探偵も複数創造している。論創海外ミステリからはすでにその代表格である『レティシア・カーベリーの事件簿』が刊行されているが、本日の読了本はもう一人の代表格、ヒルダ・アダムズ看護婦を主人公とするシリーズの長編『ミス・ピンカートン』である。
 シャーロキアンにしてクラシックミステリの翻訳家・平山雄一氏が個人で発行しているヒラヤマ探偵文庫からの一冊。

 ミス・ピンカートン

 まずはストーリー。ヒルダ・アダムズは看護婦が本職ながら、その行動力や機転をかわれて警察の手伝いもするうら若き女性だ。本日も本業を終えてやっと眠りにつこうとしたところ、警察の上司であるパットン警視から呼び出しを受ける。
 言われるままに目指したのは、かつての富豪ミッチェル屋敷。今ではその財産もかなり失ったと聞いてはいたが、名家としてまだ知られる存在だった。ところがヒルダが到着すると、驚いたことに屋敷は警官だらけ。現在のミッチェル家の主人は老婦人のミス・ジュリエットだが、その甥ハーバートが拳銃で亡くなったのだという。しかもその原因が事故、自殺、殺人すべての可能性がある。ヒルダはミス・ジュリエットの看護婦として務めながら、屋敷内の情報を集めることになるが……。

 個人的にはHIBK派は好みではなく、「もっと早く知ってさえいたら、…は避けられたのに」などどいう持って回った語りもそうだし、基本的に受け身のヒロイン、あえて主人公らに失敗させてストーリーを盛り上げたりする手法も引っかかるところである。
 だが、意外にも本作はシリーズ探偵が活動的な若い女性ということで、これまでのラインハート作品のイメージをけっこうひっくり返してくれている。「もっと早く知ってさえいたら、…は避けられたのに」というフレーズは相変わらずあるものの、キャラクターはアグレッシブだし、ストーリーも起伏に富み、事件の真相も予想以上に複雑で現代的だ。ラインハートはこれまで五、六作は読んでいるが、これまでのなかでは一番面白いのではないか(ただし『大いなる過失』は未読)。
 まあ、警察が看護婦を捜査に仕うという、そもそもの設定は無茶だけれども、この時代の女性の地位を考慮すると、こういう形でなければ女性のシリーズ探偵を成立させにくいという事情はわかる。ただ、看護婦であれば時間や場所を問わず活動しやすいという面もあり、なかなか悪くない手である。

 なお、作中のヒルダは活発な女性ということもあって、けっこうボーイッシュな口調になっているが、表紙のイラストを見るかぎりはもう少しお淑やかなイメージ。著者のイメージはどちら寄りだったのか少し気になった。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 この数年、この時期になると各ミステリのベストテンのまとめや比較みたいなことをやっているが、今年も大トリの『このミステリーがすごい! 2020年版』が発売され、ほぼ各種ランキング本が出揃ったようなので、ちょっとまとめてみた。管理人の好みゆえ海外部門だけではあるが、興味ある人はご覧ください。

 一応、基本ルールなどを書いておくと、基本的には『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」(以下「ミスマガ」)、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」(以下、「文春」)、宝島社の『このミステリがすごい!』(以下、「このミス」)の各ランキング20位までを対象に平均順位を出すというものである。原書房の『本格ミステリ・ベスト10』もけっこう知名度はあるが、ジャンルが本格のみなので対象外としている。
 また、ランキングによって対象となる刊行期間が異なるため(ミステリマガジンのみ10月から9月、他は11月から10月)、ひとつの媒体にしかランクインしていない作品は除いている。
 ただ、ひとつしかランクインしていないものでも、それがむしろランキングの個性ということにもなるので、参考として記載した。

 2020年ランキング比較

 昨日の記事でも触れたが、このところ各誌のランキングはかなり似通っている印象である。特に昨年はひどくて一位、二位が三誌とも同じ、ベストテン作品もかなり被っていて、もうどれ買ってもいいじゃんぐらいの感じであった(昨年の記事はこちら)。
 そこで今年のランキングだが、一位がまたしても三誌とも同じで、アンソニー・ホロヴィッツの『メインテーマは殺人』という結果になってしまった。上位も似てはいるが、それでも昨年よりは多少バラツキも見られる。
 例えば「文春」でのメジャー・大御所が強いところはある意味ブレがなくて素晴らしい(笑)。よそでは二十位にもランクインしていないルメートルやディーヴァー、アルテ、インドリダソンといった人気作家がしっかり入っているのは「文春」ならでは。唯一、意外だったのはSFの『三体』が入っていたこと。他誌ならともかくまさか「文春」で入るとは。
 一方の「ミスマガ」はオーソドックスでバランスよいイメージ。本格、ハードボイルド、サスペンス、ノワール、ファンタジー系もソツなく入れているのだが、「文春」ですら入れている自社の『三体』が入っていないのが不思議だ。いや、むしろ、これを入れてきた「文春」を褒めるべきか。
 「このミス」も全体的には「ミスマガ」に近いが、けっこうジャンルのボーダーライン的な作品が好まれる傾向が強い。ただ、昔よりはずいぶんマイルドになってしまったというか、ここが最近の「このミス」の物足りないところである。『1793』とか『愛なんてセックスの書き間違い』、『戦火の淡き光』あたりが「このミス」らしさといえばいえる。

 ちなみに昨年のワンツーフィニッシュを飾った創元は今年も強く、一位をはじめ二十位以内に五冊ランクイン。しかし早川も負けておらず、今年は六冊ランクイン。早川は昨年も六冊ランクインさせているが、今年特徴的なのはすべてポケミスだということだ。一誌のみのランクイン作品にもポケミスは多く、しかも初紹介の作品が多いのは編集部の目の確かさを証明しているともいえ、実にお見事である。
 創元も好調とはいえ、どれも過去に好評を博した著者の続刊が多く、そういう意味ではうかうかしていられないだろう。

 最後に管理人の気になるところは、『償いの雪が降る』、『黄』、『国語教師』、『1793』あたり。刊行当時はあまりマークしていなくて内容もなかなか面白そう。明日にでも買いにいきますかね。


※2019/12/15追記
14位『名探偵の密室』のランキング合計と平均が間違っている旨ご指摘がありました。
最後に表をまとめるとき関数を打ち間違えたようで、正しくは合計が26、平均が13となります。
なお、順位は変わらず、そのままで大丈夫です。
画像はそのうち直しますので、それまでは上の数字を読み替えてくださいませ。
ご指摘いただけた方、ありがとうございました!

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 今週は仕事が何かと忙しなく、ようやく『このミステリーがすごい!2020年版』をパラパラと。

 このミステリーがすごい!2020年版

 今ではなんだかんだ言われることも増えた『このミス』だが、ミステリのランキング本では一応、真打。たんに最後に出るだけという話もあるが(苦笑)、それでも信頼性がほかのランキングより多少なりとも高い気がするのは、やはりその出自(文春ミステリーベスト10のアンチテーゼとして誕生)、そして中立性の高さゆえだろう(公平を期すために自社の本は対象外としている)。

 とはいえ、かつて『このミス』の売りだった座談会をはじめとする企画ページがほぼない現状は、さすがに物足りない。アンソニー・ホロヴィッツの寄稿や皆川博子×辻真先の対談は悪くないが、これらはランキング紹介の延長みたいなもので、決して“企画”というレベルじゃないしなぁ。
 表紙を飾った白石麻衣のインタビューも、白石麻衣自身に罪はないけれど、この本の読者にどれだけ響いていることやら。

 ランキングについては、もう正直どのベストテンを見てもそこまでの差はない。なんせ今年の1位は「ミステリが読みたい」も「文春ミステリーベスト10」も同じ結果、アンソニー・ホロヴィッツの『メインテーマは殺人』である。しかも二年連続ホロヴィッツの三冠なので、ここは意地でも『このミス』なりの尖ったところを見せてほしかったかな。それだけ作品が良かったということでもあるので、仕方ない部分もあるのだけれど。
 それでもニクラス・ナット・オ・ダーグ『1793』、ハーラン・エリスン『愛なんてセックスの書き間違い』、マイケル・オンダーチェ『戦火の淡き光』あたりがベスト20に入っているところは『このミス』の特徴が出ているのかもしれない。

 まあ、そのうち恒例のランキング比較もやってみたいので、そこでより特徴が見えてくるかも。


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 泡坂妻夫の『喜劇悲奇劇』を読む。

 奇術や猛獣使い、アクロバットなど、さまざまなエンターテインメント詰め込んで全国を興行する予定のショウボート〈ウコン号〉。しかし、初日を目前にして一人の奇術師が殺害される。ところが座長は興行が中止になるのを怖れて警察には通報せず、関係者にも口止めをしてしまう。
 そんなこととは露知らず。酒が原因で落ちぶれた奇術師・楓七郎は、ウコン号で足りなくなった奇術師の後釜として雇われる。すると今度は道化師が初日直前に殺されてしまい……。

 喜劇悲奇劇

 著者はミステリ作家でありながら奇術師という顔ももっており、その特技を活かした『11枚のトランプ』という傑作を書いているが、本作もその系譜に連なる作品といえる。テイストも『11枚のトランプ』同様コミカルで、それだけでも楽しい作品なのだが、実はもうひとつ大きな特徴があって、それが回文だ。
 『喜劇悲奇劇(きげきひきげき)』というタイトルからして回文になっているが、それだけでなく章題や登場人物名、冒頭の一文、最後の一文、延いては回文問答まであり、徹底的な回文尽くし。しかも、それがただの遊びでなく、きちんと犯行のミッシングリンクにもなっており、さすがとしか言いようがない。
 また、連続殺人を扱っているが、ひとつひとつの犯行にも各種トリックが工夫されており、著者の遊びにかける熱意にとにかく唸らされてしまう。

 惜しむらくは終盤に明かされる真のミッシングリンクの部分が、どうにも全体の雰囲気にあっていないこと、また、結果的にただの狂言回しに終わっている主人公の扱いがもったいない感じだ。
 特に後者はダメ主人公の立ち直る物語を期待してしまっただけに、少々拍子抜け。意外な探偵役を演出する狙いがあったのかもしれないが、前者の欠点も合わせると、意外に爽快感に欠けるのである。

 したがって個人的には著者のほかの傑作よりはやや落ちるといった印象なのだが、まあ、そうはいってもその趣向だけでも間違いなく必読レベル。残念ながら現在は角川版、創元版ともに品切れ状態のようだが、古書店などでは比較的安価で入手できるので、興味がわいた方はぜひどうぞ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 アーナルデュル・インドリダソンの『厳寒の町』を読む。アイスランド、いや今や北欧を代表する警察小説、エーレンデュル捜査官を主人公とするシリーズの一冊である。

 まずはストーリー。
 レイキャビクの一角で、十歳の男の子の刺殺死体が発見された。男の子の名前はエリアス。アイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれたが、両親は離婚し、母と異父兄のニランの三人で共同住宅に引っ越して間もない頃だった。
 エーレンデュルをはじめとする捜査陣は、学校や近所の人々に聞き込みを開始し、事件の背後に人種差別があるのではと当たりをつける。
 一方で、同時に進められる別の失踪事件や、自らの過去に起こったある事件の影にも悩まされながら、エーレンデュルは捜査を進めるが……。

 厳寒の町

 前作の『声』を読んだとき、北欧ミステリの特徴について、「社会問題に起因する犯罪を扱い、これに主人公や登場人物など個人の問題も絡ませて、多重的にその国が抱える課題や人の在り方について追求していく」、なんてことを書いた。
 エーレンデュル捜査官シリーズにおいても概ねそのラインに沿ってはいるのだが、ひとつだけ付け加えるとすれば、過去の出来事と現代の事件を絡ませていることに大きな特徴がある。主人公のエーレンデュル自身もそうだが、アイスランドという国が抱える過去の亡霊を、毎回えぐり出しているのである。

 ところが本作では、ちょっと趣が違っていた。珍しくほぼアイスランドの“いま”の事件を扱っているのだ。
 これはアイスランドの移民問題という比較的新しい社会問題を扱っているせいもあるのだろうが、ミステリとしてことさらセンセーショナルなネタを選ぶのではなく、よりリアルな物語、一般市民に密着したテーマに移行しようとしている感じも受ける。
 だから本作はこれまでの作品に比べても、ひときわ地味な展開である。捜査も遅々として進まないし、それほど凝った仕掛けがあるわけでもない。トリックなどもちろんないし、正直ロジックすら少ない。刑事たちもいたって普通の人々で、それぞれに悩みを抱えるものの、その方面で劇的な展開を迎えるわけでもない。事件解決後もまったく爽快な気分にならないし、憂鬱な事件を憂鬱な刑事たちが捜査してゆき、たまたま上手く事件が解決したといっても過言ではないかもしれない。

 ただ、そんな物語であっても、いや、そんな物語だからこそ心に染みてくる場合がある。
 アイスランドは地理的にも産業的にも決して恵まれた国ではなく、人口わずか35万人、面積にして北海道と四国を合わせた程度の小さな国だ。資源に乏しく、金融と観光、ITなどが主産業だが、本作を読んでいるかぎり、それほど人々の暮らしは華やかというふうにも感じない。首都レイキャビクですら日本の行き詰まった地方都市のようなイメージであり、全体をどことなく閉塞感が覆っているのだ。しかし、それでもやはり人々は自分たちの国に誇りを持っており、それだけの背景と歴史を持っていることも確かだ。
 そんな国に、いまアイデンティティの喪失の危機が訪れようとしている。それが移民問題である。こんなヨーロッパの果ての小さな国ですらアジア諸国からの移民が多いのだという。当然ながらそこには差別問題や過激な愛国者たちが生まれてゆく。これは日本とも共通するところだろうが、小さな島国による単一民族国家ゆえ、母国が母国でなくなってしまう不安をもつ者は少なくないのである。
 著者はその重いテーマに真っ向から取り組んでいる。登場人物を通して移民に対するさまざまな考え方が繰り返し語られ、もちろんそれは紛れもなく本作のテーマなのだが、実はより大きな問題は意見の相違によってアイスランドの国民同士が憎み合ってしまうことにある。日本人にとってもまったく人ごとではない。

 ということでミステリ的な楽しみ方とはやや離れてしまったが、読み応えは十分。いまだからこそ日本でも読まれてほしい作品である。


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 湘南探偵倶楽部さんが発行している「知られざる短編」シリーズから、大下宇陀児『火傷をした楠田匡介』を読む。楠田匡介のペンネームの由来となった、『新青年』での六人の作家による競作連載『楠田匡介の悪党振り』のうちの一篇である。

 こんな話。楠田匡介が目覚めるとそこは病院であった。斯波(しは)準一と組んで花火の闇製造販売を行っていた二人だが、宿での作業中に誤って失火してしまい、大火傷で二人とも病院に運ばれていたのだ。ただ、楠田は運良く顔に火傷を負った程度だったが、斯波は全身に大火傷を負って命も危ない状態だという。
 ところが顔も包帯だらけのせいか、どうやら医師や看護婦らは二人を取り違えている。そこで楠田はふとあることを思いつく。斯波が日頃から大金を持ち歩いていることを知っていた楠田は、それを自分のものにしようと、あえて自分が斯波のままでいようと企んだのだ。しかし……。

 火傷をした楠田匡介

 まあ、他愛ないといえば他愛ない話ではある。主人公としては機転を利かせた入れ替わりトリックだったが、それが予想外の展開をみせて、最後は思いもよらない結末が……という一席。
 『楠田匡介の悪党振り』といいながら、本作の楠田は絵に描いたような小物っぷりで、そんな愛すべき犯罪者をコミカルに描きつつ、オチも決めてきれいにまとめている。まるで落語にでもありそうな話で、まずまず楽しく読める。

 ちなみに『楠田匡介の悪党振り』には、宇陀児のほかに水谷準「笑ふ楠田匡介」、妹尾アキ夫「人肉の腸詰(ソ-セイジ)」、角田喜久雄「流れ三つ星」、山本禾太郎「一枚の地図」、延原謙「唄ふ楠田匡介」という作品がある。
 まあ、ぜがひでもというほどではないが、残りも読めるなら読んでみたいなぁと少し調べてみたところ、どうやら現在入手可能なものとしては、「人間の腸詰」が論創ミステリ叢書『妹尾アキ夫探偵小説選』に、「一枚の地図」が同じく論創ミステリ叢書の『山本禾太郎探偵小説選I』に収録されていることを突き止める。
 ううむ、突き止めたのはいいが、すでに二作とも読んでいるではないか(苦笑)。恥ずかしながら全然覚えていなかった。
 さらに調べを進めると、今度は春陽堂書店が1994年に復刻した『創作探偵小説選集 第3輯』にシリーズ六作がまるまる収録されていることも判明。念のため自分の蔵書リストをチェックすると、案の定、こちらもすでに二十年ほど前に自分で買っていたわけだが(トホホ)。
 せっかくなので、こちらの感想も気が向いたらそのうちに。

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 陳浩基の『ディオゲネス変奏曲』を読む。『13・67』を読んだときの衝撃はいまだ忘れられないが、その著者の自選短編集となるのが本書である。まずは収録作。

「藍(あお)を見つめる藍(あお)」
「サンタクロース殺し」
「頭頂」
「時は金なり」
「習作 一」
「作家デビュー殺人事件」
「沈黙は必要だ」
「今年の大晦日は、ひときわ寒かった」
「カーラ星第九号事件」
「いとしのエリー」
「習作 二」
「珈琲と煙草」
「姉妹」
「悪魔団殺(怪)人事件」
「霊視」
「習作 三」
「見えないX」

 ディオゲネス変奏曲

 おお、これは愉しい短編集だ。ただ、その味わいは『13・67』とずいぶん異なっている。
 『13・67』が香港を舞台にした濃密な警察小説、しかも本格ミステリ要素も強く、その試みも実にアバンギャルドであったのに対し、本書の場合、そういった文学的な深度とは距離を置き、あくまでアイディア勝負の作品ばかりを並べている印象である。内容もミステリからホラー、SFと幅広く、どれもきっちりオチをつけている。そういう意味では基本的にわかりやすく、ゲーム的であり、気軽に楽しめる作品ばかりといえるだろう。

 しかし、単にエンタメ一本やりの短編集かというと、それもちょっと違う。著者はそういうスタイルをとることで、著者の思考や考え方をプレゼンしているような印象も受ける。本書には「著者あとがき」がついており、そこで著者自ら全作解題を書いているのだが、これもその意を強くしている。だから、そういう意味では実はきわめて実験的作品集ともいえるのではないか(ちょっと強引)。

 印象に残った作品は、まず巻頭の「藍(あお)を見つめる藍(あお)」。ITを駆使したサイコスリラーと思わせておいて、こういう捻りで落とすとは。これで掴みはOK。
 「時は金なり」は時間の売買というテーマで、皮肉なラストを用意し、現代の寓話として面白い。
 「カーラ星第九号事件」はSFミステリの秀作。探偵デュパパンという登場人物、全体の結構などから、ミステリのパロディというふうにもとれる。
 「珈琲と煙草」も嫌いではない。こういうアイディアは誰でも思いつきそうだが、逆にこうしてきちんとまとめた例はあまり記憶がない。
 怪作ナンバーワンが「悪魔団殺(怪)人事件」。悪の組織、たとえば仮面ライダーにおけるショッカーの「ような組織内で起こった殺人事件を解決する本格ミステリ。このネタを外国人に書かれたことが悔しい(笑)。しかもよくできている。
 掉尾を飾る「見えないX」が本作のベストか。大学のある授業として行われた擬似ミステリという設定がまず秀逸。ミステリやロジックの意味をあらためて問いかけるような内容もいいし、日本のサブカルチャー目白押しな遊びも楽しい。

 ということで、なかには他愛ない作品も多少あるけれど、実に愉しい一冊でありました。おすすめ。
 

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