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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 12 2019

『このミステリーがすごい!』編集部/編『このミステリーがすごい!2020年版』(宝島社)

 今週は仕事が何かと忙しなく、ようやく『このミステリーがすごい!2020年版』をパラパラと。

 このミステリーがすごい!2020年版

 今ではなんだかんだ言われることも増えた『このミス』だが、ミステリのランキング本では一応、真打。たんに最後に出るだけという話もあるが(苦笑)、それでも信頼性がほかのランキングより多少なりとも高い気がするのは、やはりその出自(文春ミステリーベスト10のアンチテーゼとして誕生)、そして中立性の高さゆえだろう(公平を期すために自社の本は対象外としている)。

 とはいえ、かつて『このミス』の売りだった座談会をはじめとする企画ページがほぼない現状は、さすがに物足りない。アンソニー・ホロヴィッツの寄稿や皆川博子×辻真先の対談は悪くないが、これらはランキング紹介の延長みたいなもので、決して“企画”というレベルじゃないしなぁ。
 表紙を飾った白石麻衣のインタビューも、白石麻衣自身に罪はないけれど、この本の読者にどれだけ響いていることやら。

 ランキングについては、もう正直どのベストテンを見てもそこまでの差はない。なんせ今年の1位は「ミステリが読みたい」も「文春ミステリーベスト10」も同じ結果、アンソニー・ホロヴィッツの『メインテーマは殺人』である。しかも二年連続ホロヴィッツの三冠なので、ここは意地でも『このミス』なりの尖ったところを見せてほしかったかな。それだけ作品が良かったということでもあるので、仕方ない部分もあるのだけれど。
 それでもニクラス・ナット・オ・ダーグ『1793』、ハーラン・エリスン『愛なんてセックスの書き間違い』、マイケル・オンダーチェ『戦火の淡き光』あたりがベスト20に入っているところは『このミス』の特徴が出ているのかもしれない。

 まあ、そのうち恒例のランキング比較もやってみたいので、そこでより特徴が見えてくるかも。


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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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