この数年、この時期になると各ミステリのベストテンのまとめや比較みたいなことをやっているが、今年も大トリの『このミステリーがすごい! 2020年版』が発売され、ほぼ各種ランキング本が出揃ったようなので、ちょっとまとめてみた。管理人の好みゆえ海外部門だけではあるが、興味ある人はご覧ください。
一応、基本ルールなどを書いておくと、基本的には『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」(以下「ミスマガ」)、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」(以下、「文春」)、宝島社の『このミステリがすごい!』(以下、「このミス」)の各ランキング20位までを対象に平均順位を出すというものである。原書房の『本格ミステリ・ベスト10』もけっこう知名度はあるが、ジャンルが本格のみなので対象外としている。
また、ランキングによって対象となる刊行期間が異なるため(ミステリマガジンのみ10月から9月、他は11月から10月)、ひとつの媒体にしかランクインしていない作品は除いている。
ただ、ひとつしかランクインしていないものでも、それがむしろランキングの個性ということにもなるので、参考として記載した。

昨日の記事でも触れたが、このところ各誌のランキングはかなり似通っている印象である。特に昨年はひどくて一位、二位が三誌とも同じ、ベストテン作品もかなり被っていて、もうどれ買ってもいいじゃんぐらいの感じであった(
昨年の記事はこちら)。
そこで今年のランキングだが、一位がまたしても三誌とも同じで、アンソニー・ホロヴィッツの
『メインテーマは殺人』という結果になってしまった。上位も似てはいるが、それでも昨年よりは多少バラツキも見られる。
例えば「文春」でのメジャー・大御所が強いところはある意味ブレがなくて素晴らしい(笑)。よそでは二十位にもランクインしていないルメートルやディーヴァー、アルテ、インドリダソンといった人気作家がしっかり入っているのは「文春」ならでは。唯一、意外だったのはSFの『三体』が入っていたこと。他誌ならともかくまさか「文春」で入るとは。
一方の「ミスマガ」はオーソドックスでバランスよいイメージ。本格、ハードボイルド、サスペンス、ノワール、ファンタジー系もソツなく入れているのだが、「文春」ですら入れている自社の『三体』が入っていないのが不思議だ。いや、むしろ、これを入れてきた「文春」を褒めるべきか。
「このミス」も全体的には「ミスマガ」に近いが、けっこうジャンルのボーダーライン的な作品が好まれる傾向が強い。ただ、昔よりはずいぶんマイルドになってしまったというか、ここが最近の「このミス」の物足りないところである。『1793』とか『愛なんてセックスの書き間違い』、『戦火の淡き光』あたりが「このミス」らしさといえばいえる。
ちなみに昨年のワンツーフィニッシュを飾った創元は今年も強く、一位をはじめ二十位以内に五冊ランクイン。しかし早川も負けておらず、今年は六冊ランクイン。早川は昨年も六冊ランクインさせているが、今年特徴的なのはすべてポケミスだということだ。一誌のみのランクイン作品にもポケミスは多く、しかも初紹介の作品が多いのは編集部の目の確かさを証明しているともいえ、実にお見事である。
創元も好調とはいえ、どれも過去に好評を博した著者の続刊が多く、そういう意味ではうかうかしていられないだろう。
最後に管理人の気になるところは、『償いの雪が降る』、『黄』、『国語教師』、『1793』あたり。刊行当時はあまりマークしていなくて内容もなかなか面白そう。明日にでも買いにいきますかね。
※2019/12/15追記
14位『名探偵の密室』のランキング合計と平均が間違っている旨ご指摘がありました。
最後に表をまとめるとき関数を打ち間違えたようで、正しくは合計が26、平均が13となります。
なお、順位は変わらず、そのままで大丈夫です。
画像はそのうち直しますので、それまでは上の数字を読み替えてくださいませ。
ご指摘いただけた方、ありがとうございました!