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新年明けましておめでとうございます。
昨年は当ブログに足をお運びいただき、どうもありがとうございました。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 さて、今年の読了一冊目は、クラシックミステリの評論同人誌「Re-ClaM」が発行したJ・T・ロジャーズの中短編集『死の隠れ鬼』。
 わが国では長編『赤い右手』以外、ほぼ読むことがかなわなかった(短編は雑誌とアンソロジーに二作ほど掲載あり)が、本国も似たような状況だったようで、本書の解説によると2004年になってランブルハウスという小出版社から長編が四冊復刻されたことで、その潮目が変わったらしい。
 本書はそんな動きのなかで2006年に刊行された中短編集『Killing Time and Other Stories』から三編を抜粋したもの。収録作は以下のとおり。

Murder of the Dead Man「死者を二度殺せ」
The Crimson Vampire「真紅のヴァンパイア」
The Hidding Horror「死の隠れ鬼」

  死の隠れ鬼

 これはなかなか面白い中短編集だ。
 『赤い右手』を読んだ人ならご存知だろうが、ロジャーズはかなりクセのある作家であり、本書の作品も非常に個性的である。もともとパルプ雑誌でミステリからSF、ホラー、冒険小説までジャンル問わず書き散らかしていたせいもあるのか、決して完成度が高いわけではないのだが、作品の熱量がとにかく高い。
 内容は怪物を登場させたりするなど発想がまず突飛だし、なんというか著者の思ったことをそのまま原稿用紙に叩きつけている印象である。そのくせ伏線やミスディレクションはけっこう意識している節もある(とはいえ、こちらも完成度は低い)。
 ぶっちゃけミステリとしての品質だけを問えば、かなり荒っぽい作りであることは間違いないのだが、それなのに惹きつけられる魅力がある。喩えが適切かどうか自信はないが、橘外男や大河内常平の諸作品に通じるものがあるかもしれない。
 文章もそう。一人称三人称がごちゃ混ぜだったり、時系列もここかしこに不規則だったり、基本的には悪文ではあるが、テンションの高さが尋常ではなくて思わず引き込まれる。このあたりも橘外男っぽいのだ。

 まあ、「真紅のヴァンパイア」だけはさすがにやりすぎて玉砕した感はあるが(苦笑)、「死者を二度殺せ」や「死の隠れ鬼」は一読に値する。この二作はどちらも被害者の視線で幕を開け、のっけからクライマックス。しかも、その後は現状すらはっきりしないまま、物語がどんどん転んでいくので、先が気になってしょうがない。発想や文章も含め、このリーダビリティの高さが最大の武器なんだろう。

 ちなみに原書房からは『恐怖の夜、その他の夜』が予定されているようで(おそらく短編集)、これは絶対読まねばなぁ。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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