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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 01 2020

イーデン・フィルポッツ『チャリイの匕首』(湘南探偵倶楽部)

 新年早々、身内で不幸があり、しばらく東京を離脱。仕事始めにもまったく間に合わず、この金曜からようやく日常に復帰した。
 もちろん読書もまったく進まず。とりあえず軽いものから再開ということで、本日の読了本はイーデン・フィルポッツの『チャリイの匕首』。「新青年」の昭和四年夏季増刊号に収録された中編を湘南探偵倶楽部が復刻した一冊。

 チャリイの匕首

 イギリス南西部に位置するデヴオン(デヴォン)州にある田舎町トワンブリ。その地で白石荘(ホワイトスーン荘)と呼ばれる大邸宅に、メアリ・メイデウという老嬢が暮らしていた。
 しかし、ある朝のこと、メアリがナイフで刺殺されているのが発見される。ロンドン警視庁からジョン・リングローズ警部が呼ばれ、さっそく捜査を開始。メアリは決して人に好かれるタイプとはいえなかったが、殺害するほどの恨みをもつ者はおらず、かといって状況から外部の犯行とも考えにくい。
 メアリの秘書兼話相手のフォレスタ嬢、秘書や料理人といった使用人たち、そしてロンドンから度々、泊まりに来るメアリの甥ヴィンセントから話を聞くリングローズは、ヴィンセントの様子がおかしいことに気がつき、やがてヴィンセントから思いもよらぬ告白を聞かされ……。

 旧家を舞台に人間関係や財産などが絡んで事件が起こる、いわゆる「館もの」ミステリ。探偵小説黄金時代の香り濃厚で、これぞクラシックミステリという感じである。
 ただ、「館もの」はやはり長編でこそ生きる。本作はいかんせん短めの中編といったボリュームで、基本的に目眩しの材料が少ない(登場人物の少なさなど)のが致命的だ。伏線も非常にわかりやすくなってしまい、長編ならもう少しいろいろできたのだろうなとは思う。
 逆にいうと教科書どおりのオーソドックスな作品という見方もでき、当時であればけっこう普通に面白く読めたはずだ。

 ちなみに探偵役のジョン・リングローズはいうまでもなく『闇からの声』と『守銭奴の遺産』にも登場する、フィルポッツの数少ないシリーズ探偵の一人。彼の活躍が読めるのは、本作を含めてこの三作しかないようなので、押さえておきたい作品ではある。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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