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 『蛇女対マングース男爵 栗田信傑作集 下巻』を読む。当初は上巻『和製シャーロック・ホームズの冒険』に続いて一気に読もうと思っていたのだが、あの作風と内容で立て続けに二冊はやっぱり辛いなと思い直し、クイーンや連城三紀彦を挟んで少し口直しをした次第(笑)。もちろん、これは決して栗田信を貶めているのではなく、むしろその個性を尊重してのことなので念のため(笑)。

 栗田信傑作集蛇女対マングース男爵

第一部 ミステリ
「原色の迷路」
「妄想の中の男」
「死者の微笑」
「髑髏を抱く男」
「万引監視員」

第二部 SF・怪奇・異色作品
「マヌカン人形」
「消えた遺体」
「第七感」

第三部 時代ミステリ
「満月に哭く男〜からす猫変化〜」
「さくら判官 破顔一笑」

第四部 異形の者たち2
「美女変貌す」
「獣鬼の覆面 卒塔婆を抱く女」

 収録作は以上。上巻がシリーズと名義別で構成されていたのに対し、下巻ではジャンル別でまとめられている。この「ジャンル別」という目次のせいで余計にそう感じたのかもしれないが、栗田作品は普通のミステリより、圧倒的に超自然要素やホラー要素の入ったものの方が面白いようだ。
 これまでにミステリ珍本全集の『発酵人間』も含め、栗田信の本は三冊読んだことになるが、ミステリ系の作品はほぼ通俗スリラーやかつての日活アクション映画を彷彿とさせるようなものばかり。しかも意外にオーソドックスにまとめられている。
 これは単なる想像にすぎないけれども、栗田が当時の雑誌や貸本などの注文を数多くこなすため、ひたすら当時の流行やニーズに合わせて書いた結果といえるだろう。粗製濫造というと失礼だが、ミステリ的にめぼしい作品はほぼなく、とにかく勢いと雰囲気だけで読ませる作品ばかりという印象だ。

 ところが、これに超自然要的な要素やSF・ホラー要素が入ってくると話は違う。既製のアイデアに縛られない栗田独自の発想が爆発し、一気に面白くなるから不思議である。勢いのある文体もこういう世界観になるとピタリとはまる。しかもストーリーの盛り上げ方がまた上手く、「美女変貌す」などは話が本編に入っていないにもかかわらずゾクゾクするほどだ。
 もし栗田信が本格的な伝奇小説を書いていれば、かなり凄いものができあがったのではないだろうか。まあ、その一例が『発酵人間』なのかもしれないが、アレも上巻に続編の短編が収録されていたけれども、ああいったシリーズの繋ぎも実はうまかったのではという気になる。

 まあ、真っ当な読書家やミステリファンには到底お勧めできるようなものではないけれど、栗田信、もう少し読んでみたいものだ。商業出版はもちろん、復刻でもなかなか難しいラインだろうし、いよいよ古書で探すしかないのかな。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 エラリー・クイーンの『ミステリの女王の冒険』を読む。1970年代にアメリカで放映されたテレビドラマ『エラリー・クイーン』のシナリオ傑作選であり、『刑事コロンボ』で知られるリンク&レヴィンソンが制作総指揮を務めている。残念なことに商業的にはコロンボのような成功を収めなかったものの、そのクオリティはファンや専門家の間で高く評価されたという。

 ミステリの女王の冒険

The Adventure of the 12th Floor Express「十二階特急の冒険」
The Adventure of the Chinese Dog「黄金のこま犬の冒険」
The Adventure of the Mad Tea Party「奇妙なお茶会の冒険」
The Adventure of the Wary Witness「慎重な証人の冒険」
The Adventure of the Grand Old Lady「ミステリの女王の冒険」

 収録作は以上。
 最近読んだクイーンのラジオドラマ集『ナポレオンの剃刀の冒険』や『死せる案山子の冒険』に比べると、本書のテレビドラマ集は放送時間が長いこともあってか、かなりしっかりした作りである。ボリュームも中編レベルで、内容も複雑。放映時間は一時間だったらしいが、これでよくその中に収まったものだと思えるほどだ。
 もちろんボリュームがあっても質が低ければ意味はないが、本書はその点でも十分に及第点。ラジオドラマのようなキレには欠けるが、本書ではドラマとしての面白さがある。

 ただ、ラジオドラマ集と違って、こちらはクイーンが直接手掛けたものではなく、あくまで名義貸しや作品提供に近い。それでもこれだけの水準に仕上がったのは、リンク&レヴィンソンがしっかりしたミステリマインドの持ち主だったこと、そしてクイーンの成功したラジオドラマをかなり参考にしたことが大きいだろう。まあ、本書はクイーンとリンク&レヴィンソンの合作みたいなものだから、成功しようがしまいが、ファンならこれは読むしかないんだけどね。
 なお、作品そのものとは関係ないが、本書は解説も恐ろしいほど充実していて、正直、その部分だけでも買いである。


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 久々の連城三紀彦である。まだ未読が多いのでもう少しペースをあげたいところだが、最後に読んだのがもう四年前とは嫌になる。その間に新刊もけっこう出ているしなぁ。
 だいたい昭和の作家はメジャーどころだけでも多岐川恭や笹沢左保、泡坂妻夫、中町信、松本清張、結城昌治、梶龍雄、陳舜臣、小泉喜美子、土屋隆夫や、天藤真、戸川昌子、中井英夫、西村京太郎、海渡英祐などなど、読みたい作家が目白押しで、うっかりしていると、すぐに何年ぶりとかになってしまう(苦笑)。もちろん当ブログでおなじみの戦前作家や海外のミステリもまだまだ読みたいわけで、もうキリがない。ああ、毎日、本だけ読んで給料もらえないかなぁ〜(ずんの飯尾風に)。


 どうでもいい枕を振ったところで『運命の八分休符』である。連城三紀彦には珍しいシリーズ探偵ものの連作短編集で、ユーモアと恋愛要素をふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。まずは収録作。

「運命の八分休符」
「邪悪な羊」
「観客はただ一人」
「紙の鳥は青ざめて」
「濡れた衣装」

 運命の八分休符

 探偵役の主人公は田沢軍平という青年。分厚い丸眼鏡をかけ、髪は薄く、がに股で、着ている服はみすぼらしく、おまけに定職にも就かず、安アパートで暮らしている。何もここまでしなくとも、というような設定だが、性格的には極めて繊細で温厚。意外なことに空手という特技もある。
 そんな青年がなぜか毎回、美女にモテモテで、難事件も解決するという趣向の連作。恋愛成分がかなり高めで、単品で読むぶんには楽しめるが、同じ主人公で続けて読まされると少々しつこい感じは否めない。個人的には異なる主人公や味つけで読みたかった作品もあるが、まあ、そこは好みの問題か。
 ただ、恋愛成分高めとはいえ、ひと皮むけば本格として相当にハイレベルに仕上がっているのは、さすが連城ブランド。その期待は決して裏切られない。

 以下、各作品のコメントを。

 表題作の「運命の八分休符」は魅力的なアリバイ崩しであるだけでなく、タイトルの意味にやられる。ついでにいえば最初の作品なので、恋愛要素も気にならず、むしろそれ込みで楽しめる。

 「邪悪な羊」は見事な誘拐もので、これは後の作品の元になってるのかもしれない。恋愛ものとしてはベタな設定だが、それがまたなかなか染みる。

 「観客はただ一人」は、恋多き女優が自分の過去つきあった男たちを集め、一夜限りの自伝的舞台を演じるという導入に魅了される。もちろんその舞台は予想どおり殺人劇となってしまうのだが、最終的にいろいろな意味で反転する構図にやられる。この辺から恋愛要素が鼻につく(笑)。

 構図の逆転と叙情性が色濃く出た「紙の鳥は青ざめて」は、地味ながら、ある意味でもっとも著者のよさが出た作品。軍平が男前に脳内変換される(笑)。

 “構図の逆転”の安売りはしたくないけれど、これまたそうとしか言いようがない「濡れた衣装」。ミステリとしてはチョイと強引な感じではあるが、昭和の香りを感じられる雰囲気が好きだなぁ。


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