仕事が立て込んでいて読書がなかなか進まず。そんなわけで本日も湘南探偵倶楽部さん復刻の小冊子(短編)でお茶を濁す。ものはジョルジュ・シムノンの『医師殺害事件』。かつて『新青年』に掲載されたものだ。

本作は安楽椅子探偵ジョゼフ・ルボルニュ(本書ではジョゼフ・ルボルニエ)シリーズの一作で、創元推理文庫からはルボルニュものの短編集『13の秘密』が出ているので、ご存知の方も多いと思う。ちなみに同書はメグレものの「第一号水門」を併録しており、現在の正式タイトルは『13の秘密 第一号水門』である。
ジョゼフ・ルボルニュ・シリーズは、シムノンにしては珍しいパズル性重視の本格ミステリである。というか、原書では図版やら写真やらも合わせて載っていたらしく、パズル性重視どころか、本当に推理クイズとしての趣向だったらしい(このあたりの情報は瀬名秀明氏が詳しい紹介を
こちらにアップしている)。
管理人も四十年ぐらい前に創元推理文庫で読んではいるが内容はほぼ忘れているので、シムノンがこういうものも書いていたのかと、今さらながら驚いている次第である。
内容としては、密室で銃殺されたと思われる医師の死体が発見されるのだが、犯人はおろか凶器すら見つからないという難事件。蓋を開ければ、まあ、こんなものかという感じなのも推理クイズ的なところだが、犯人の心情を慮る最後はやはりシムノンの味わいである。
ちなみに本作は『13の秘密』に収録されている「クロワ・ルウスの一軒家」と同じ作品である(ただ、手元に『13の秘密』がなく、確認は取れていないので、もしかしたら間違っているかもしれない。念のため)。