Posted in 08 2020
Posted
on
奈落一騎『江戸川乱歩語辞典』(誠文堂新光社)
先日読んだ『シャーロック・ホームズ語辞典』は2019年12月に刊行されたものだが、売れ行きが好調だったのか、姉妹編と思われる『江戸川乱歩語辞典』が既に今月発売され、また『金田一耕助語辞典』というのも来月に同じ誠文堂新光社から出版される。
まあ『シャーロック・ホームズ語辞典』の出来も悪くなかったし、基本的にこういうものが嫌いじゃない管理人としては、とりあえず買ってはみるのだが、今回の『江戸川乱歩語辞典』については、ちょっとアレ?という感じであった。

基本的な構成は『シャーロック・ホームズ語辞典』と同じで、あいうえお順に乱歩にまつわる関係用語を解説した一冊である。しかし、普通の辞典が一切合切の言葉を収録するのに対し、この手の趣味的な辞典ではさすがにそこまではできない。もちろんそれができれば理想だが、正典の数にも左右されるし、商売上あまり高価な本にもできないだろう。そこで編者・著者がしっかり編集方針を決め、それに則って収録する語をセレクトしなければならず、その結果で大きく内容も印象も変わってしまうのである。
たとえば『シャーロック・ホームズ語辞典』であれば、正典、登場人物、登場アイテムといったところを優先しつつ、これに近年の原作以外のテレビドラマとかマンガなどを盛り込んだイメージだ。
本書でまず気になったのは、そういった辞典の編集方針がハッキリしていないことだ。収録している語が何を基準に選ばれているのかわかりにくい。正典でもなく登場人物でもない。特別な方向性を決めていないのなら最悪それでもいいのだが、それなら基本的に正典と登場人物ぐらいは網羅してほしい。
その一方で目立つのは、正典中にある一文をそのまま載せていること。紹介したい著者の気持ちはわからないでもないが、単語でもない長々とした文章を、辞典という体裁にぶち込むのはあまりに乱暴で無理がある。
また、本編以外の付録も何か勘違いしているようで、乱歩の生涯をまとめた漫画(これも漫画というよりは文章に挿絵をつけただけのもの)、当時の東京マップ、コラム、作品紹介とあるけれども、そもそもこれらは辞典本編に入れるべき内容ではないのか。「乱歩作品ベスト3」に至っては中途半端な差し込みにすることで非常に本が読みにくくなり、しかも二十人程度のベスト3なんて今更いる?という内容。
まあ、それでも収録されている内容まで否定するつもりはなく、乱歩の名文などを紹介したいのであれば、そういう本にすればよかっただけのこと。それをわざわざ辞典という容れ物でまとめようと思ったことが一番の間違いであり、なんとも中途半端な印象になってしまった原因だ。
素直に乱歩のガイドブックやコラム集といった切り口にした方がよかったのになぁ。来月には『金田一耕助語辞典』もでるが、ううむ、そちらは大丈夫か。
まあ『シャーロック・ホームズ語辞典』の出来も悪くなかったし、基本的にこういうものが嫌いじゃない管理人としては、とりあえず買ってはみるのだが、今回の『江戸川乱歩語辞典』については、ちょっとアレ?という感じであった。

基本的な構成は『シャーロック・ホームズ語辞典』と同じで、あいうえお順に乱歩にまつわる関係用語を解説した一冊である。しかし、普通の辞典が一切合切の言葉を収録するのに対し、この手の趣味的な辞典ではさすがにそこまではできない。もちろんそれができれば理想だが、正典の数にも左右されるし、商売上あまり高価な本にもできないだろう。そこで編者・著者がしっかり編集方針を決め、それに則って収録する語をセレクトしなければならず、その結果で大きく内容も印象も変わってしまうのである。
たとえば『シャーロック・ホームズ語辞典』であれば、正典、登場人物、登場アイテムといったところを優先しつつ、これに近年の原作以外のテレビドラマとかマンガなどを盛り込んだイメージだ。
本書でまず気になったのは、そういった辞典の編集方針がハッキリしていないことだ。収録している語が何を基準に選ばれているのかわかりにくい。正典でもなく登場人物でもない。特別な方向性を決めていないのなら最悪それでもいいのだが、それなら基本的に正典と登場人物ぐらいは網羅してほしい。
その一方で目立つのは、正典中にある一文をそのまま載せていること。紹介したい著者の気持ちはわからないでもないが、単語でもない長々とした文章を、辞典という体裁にぶち込むのはあまりに乱暴で無理がある。
また、本編以外の付録も何か勘違いしているようで、乱歩の生涯をまとめた漫画(これも漫画というよりは文章に挿絵をつけただけのもの)、当時の東京マップ、コラム、作品紹介とあるけれども、そもそもこれらは辞典本編に入れるべき内容ではないのか。「乱歩作品ベスト3」に至っては中途半端な差し込みにすることで非常に本が読みにくくなり、しかも二十人程度のベスト3なんて今更いる?という内容。
まあ、それでも収録されている内容まで否定するつもりはなく、乱歩の名文などを紹介したいのであれば、そういう本にすればよかっただけのこと。それをわざわざ辞典という容れ物でまとめようと思ったことが一番の間違いであり、なんとも中途半端な印象になってしまった原因だ。
素直に乱歩のガイドブックやコラム集といった切り口にした方がよかったのになぁ。来月には『金田一耕助語辞典』もでるが、ううむ、そちらは大丈夫か。