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 マイクル・コナリーの『レイトショー』を読む。女性刑事レネイ・バラードを主人公とする新シリーズの一作。

 まずはストーリー。
 レネイ・バラードはハリウッド分署の深夜勤、通称レイトショーの担当刑事だ。初動には関わるものの、朝には日勤の刑事たちに事件を引き継がなければならない。そのためレイトショーの刑事は重要事件に関わることができず、自ずとレイトショーに配属されることは、出世の道を外れることを意味していた。バラードは数年前に上司とトラブルを起こし、今の配属先に飛ばされたのである。
 そんなある日の夜、女装娼婦の暴行事件とナイトクラブでの銃撃事件が発生する。本来なら日勤の刑事に渡して終わりだったが、バラードは己の信念から二つの事件を密かに追い始める……。

 レイトショー(下)

 これは紛れもなくボッシュシリーズの継承である。レネイ・バラードはまさに女性版ボッシュであり、ボッシュシリーズの要でもある「正義の在り方」について、彼女もまた己の信念を貫こうとする。
 しかし、バラードは単なる代変わりというわけではなく、ボッシュとは別の意味での濃厚な設定がなされている。三十代独身、ハワイ出身。父をサーフィンの事故で失い、母とは音信不通。新聞記者時代に自分の道を見つけ、警察官に転職した。夜勤明けにはサーフィンを欠かさず、そのまま浜辺でテント暮らしを続けている。特定の住居を持たないという設定はかなり奇抜なのだが、ハワイ先住民の血を引く彼女の出自とおおらかで自然を愛するキャラクターに馴染んでおり、作り物めいたところはあまり感じさせない。このあたりの説得力はさすがコナリーであろう。

 そんなアウトドア派の彼女だが、こと仕事に関しては、とりわけ精神的な部分においては、ボッシュと同様のタイプというのが面白い。正義のためには妥協を許さず、上司とのトラブルによって冷や飯を食わされているところもボッシュ同様である。
 これまたコナリーの巧いところだが、本作で描かれる二つの事件は、直接には繋がりがないのだけれど、それぞれの事件を通じて彼女の内面と過去を描いているように思う。女装娼婦の暴行事件については、被害者たちへのアプローチを通じて彼女の正義に対する考え方を示し、一方のナイトクラブの銃撃事件では彼女自身の過去のトラブルも絡めて、今の彼女の状況が確認できるという仕組みだ。
 言ってみれば本作はレネイ・バラードのお披露目作。孤高を貫こうとするバラードが信頼できる仲間と出会うための壮大なストーリーの第一歩というイメージもあるのだが、それにしてはコナリーもかなり過酷な事件をあてがったものだ。

 新シリーズということで、どうしてもキャラクター中心に読んでしまったが、事件も悪くない。特にナイトクラブの銃撃事件では完全にいっぱい食わされてしまって、こういうミステリとしての肝を疎かにしないところもコナリーの良さだろう。
 ともあれ傷つきながらも何とか明日へ踏み出していくバラードの姿は実に美しい。ボッシュとの競演も楽しみになってきた。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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