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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 12 2020

ミステリベストテン比較2021年度版

 今年も各ミステリのランキングが出揃ったようなので、三誌の平均順位などを出してみた。なお、これも毎年、書いていることだが、管理人の好みで海外部門しかやっていないので念のため。
 以下、基本ルール。

・『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」(以下「ミスマガ」)、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」(以下、「文春」)、宝島社の『このミステリがすごい!』(以下、「このミス」)の各ランキング20位までを対象に平均順位を出し、それを元にしたランキングとする
・原書房の『本格ミステリ・ベスト10』はジャンルが本格のみなので対象外としている。
・いち媒体にしかランクインしていない作品はブレが大きくなるため除き、参考として記載した。

2021年度ランキング比較_2

 ランキング自体のあり方については、こちらの記事で書いたり、Twitterでも少し呟いたりしたせいか、そこそこガス抜きができてしまったので(笑)、本日は純粋に作品を見てみたい。
 といっても今年は例年以上に各ランキングが似通ってしまい、本当にやばいことになっている。ここまで似てくると発売日の遅いランキングは誰も見なくなるだろうし、「このミス」が投票期日の〆切を今年から変えるのは、おそらくそれが理由ではないかと邪推している(笑)。

 それにしてもアンソニー・ホロヴィッツは強い。これで三冠三連覇。正直、今年は作品の水準、対抗馬の強さを考えると、どう贔屓目に見ても無理だろうとは思っていたのだが。まあ、これは複数冊を投票できるシステムのせいが大きいとは思うけれど、いや、それにしても。
 ホロヴィッツの三連覇した作品は、どれもミステリのもっとも古典的かつ基本的なスタイルである本格だ。謎を解く楽しさをきちんと中心に据えところがまず魅力であり(しかもきちんと現代風にアレンジして)、加えてキャラクターの魅力、メタミステリーな全体の仕掛けをわかりやすく取り込んでいるところなどが評価される理由だろう。
 早い話、総合力が高い。作品全体に目配りが効いている。弱点が極めて少なく、それがまんべんなく票を集めたことにつながったと言える。

 これに対抗するには、いわゆる超二流、超B級では難しいのかもしれない。知的興奮と娯楽性、大人も楽しめるストーリーの奥行き、少なくともそれらは満たしていないと、なかなか牙城は崩せないと見る。
 ただ、当然ホロヴィッツも飽きられる可能性は十分にあるわけで、来年以降はさすがにこう簡単にはいかないだろう(実は今年も絶対、無理だと思っていたのに三冠だから嫌になる)。
 今年でいえば、管理人の予想では『指差す標識の事例』や『あの本は読まれているか』がくると思っていた。前者は翻訳者四人を擁した話題性、1000ページもあるボリューム、歴史ものという知的興味をくすぐるジャンル性など、対抗馬としては圧倒的な存在感だ。後者も歴史もので、かつテーマが秀逸、穴馬の可能性も十分だったはず。
 ところが蓋を開ければ両者ともザリガニにも抜かれる始末。まあ、どちらも肝心のミステリ的な部分が弱かったのがやはり響いたかなとは思うが、これで勝てないとなると来年はどうなることやら。

 あと、ホロヴィッツも強いが創元も強い。ホロヴィッツ以外に先ほどの『指差す〜』や『あの本は〜』をはじめ二十位内に六冊もランクインしている。一誌飲みのランクインでも二冊入っている。早川書房もランクインした数自体は匹敵しているが、上位に来る作品がやや弱い。それでも今年は『ザリガニの鳴くところ』で救われたが、むしろ『死亡通知書 暗黒者』が伸びきらなかったのが惜しい。というか、なんでハヤカワミステリなのに「ミステリが読みたい!」でランクインしなかったのか(笑)。
 版元でいうなら、地味な作品が多いせいか上位にはなかなか上がってこないけれど、この数年の集英社文庫と小学館文庫はいい作品を出し続けているイメージ。集英社はフランスミステリ、小学館は警察ものが多い印象だけれど、管理人もあまり読めてないので、来年の宿題か。

 宿題というほどでもないが、年末年始あたりで読んでみたいのは、まず『ザリガニの鳴くところ』。あとは『言語の七番目の機能』、『パリのアパルトメン』あたりか。ただ、昨年もそんなことを書いておいてまだ読んでないものもあるしなぁ。とりあえずハードカバーの新刊だけは早く読むことにしたい。文庫オチするとショックだし(笑)。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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