チャールズ・ディケンズの『探偵局』を読む。湘南探偵倶楽部が復刻した短編で、もとは博文館が1930年に刊行した〈世界探偵小説全集〉第一巻『古典探偵小説集』に収録されていたものだ。

英国を代表する作家ディケンズは、探偵小説テイストの作品を多く残したことでも知られている。多分それは長篇での印象がそうさせているのだろうが(実際、未完の長篇ミステリも書いたわけだし)、短篇も然り。岩波文庫の『ディケンズ短篇集』などは、そもそもミステリ要素の強いものを集めているそうで、ミステリファンが読んでも十分楽しめるらしいが、残念ながら管理人は未読である(笑)。まあ収録作のうち、いくつかは別の本で読んでいるので、この場はそれでご勘弁。近いうちに『ディケンズ短篇集』も片付ける予定である。
で、「探偵局」もそんなミステリ要素の強い作品である、というか完全にミステリでしょう、これは。
そもそも設定が奮っている。語り手は雑誌もしくは新聞社の記者。ロンドン警視庁がスコットランドヤード通りに庁舎を構えてから、より活躍するようになったのではということで、刑事たちに座談会形式でインタビューしたという設定なのである。
ストーリーは座談会に出席した刑事たちが、それぞれ思い出の活躍を語るというスタイル。要は連作短編集みたいなもので、作品自体は一つの短篇ながら、お話としては五つのストーリーが楽しめる。
さすがにミステリ夜明け前の作品なので高望みはできないけれど(ご都合主義の多さよ)、論理的に捜査を進めるという点に関してはきちんと筋を通しているところに注目。こういうところから警察の捜査が発展してきたのだなという理解の助けにはなり、そういう意味で捨てたものではない。ただ、中には容疑者の汚名をすすいで「ハイお終い」という話もあり、「犯人は放ったらかしかよ」と思わず心の中で叫んだ話もあったけれど(苦笑)。