ポール・アルテの『殺人七不思議』に付いてきた短篇一話収録の小冊子『粘土の顔の男』を読む。
長編ばかりが紹介されているアルテだが、もちろんそれが悪いわけではないけれど、アルテの本領はむしろワンアイデアをサクッと活かす短篇にこそあるのではないかと思っている。そういう意味で行舟文化のアルテ新刊についてくる付録の短篇は、いつも楽しみなのだ。いずれ一冊にまとめてくれるとありがたい。

さて、本作は例によってオカルト趣味全開&密室ものの一作。メインのネタがどこかで読んだようなものなので、これまでの特典よりはやや落ちるかなという印象だが、トータルではまずまず面白く読めた。
しかし本編だけでも十分いけるのに、わざわざ事件の持ち込み方にワトスン役を絡めたり、解決にタイムリミットを設けたりするのがアルテらしいといえばアルテらしい。サービス精神といえば聞こえはいいが、必要以上にゴテゴテさせてしまうのはアルテの悪い癖だよなぁ。
なお、“粘土の顔の男”の正体は、昨今の風潮を考えると、やや際どい感じ。特典冊子だからまだいいけれど、売り物だとどうだろう。自分が編集だったら、例えばこれを雑誌に掲載するのはちょっと躊躇いそうだ。