マイクル・コナリーの『汚名』をとりあえず上巻まで読む。
前作『レイトショー(上・下)』は新キャラクターの女性刑事レネイ・バラードが主役を務めたが、本作はお馴染みハリー・ボッシュの返り咲きである。
他のキャラクターとの共演やカメオ出演みたいなものまで含めると、いったいこれが通算何作目のボッシュ登場作品になるのやら。面倒なのでいちいち数えはしないけれど(笑)、おそらく二十作はくだらないはずだ。読み捨て前提みたいな読み物ならともかく、この質をキープしてここまで書き継ぐコナリーの剛腕には驚くばかりである。

本作は二つの事件の捜査が並行して進むスタイルである。一つは薬局の経営者とその息子が店で銃殺される事件。もう一つの事件は、ボッシュが過去に解決したはずの事件だ。今頃になって新たな証拠が出たという話だが、裏にはボッシュを陥れようとする企みが感じられた……。
これまで修羅場という修羅場を潜り抜けてきたボッシュだから、このぐらいの事件ではなんだか余裕が感じられる(いや、十分に深刻ではあるのだが)。それはそれで心地よい部分もあるけれど、同時に寂しさもあり、やはり時の流れを感じずにはいられない。
下巻の感想に続く。