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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 05 2021

岸本千佳『もし京都が東京だったらマップ』(イースト新書Q)

 また数年前に流行った京都本から一冊。岸本千佳の『もし京都が東京だったらマップ』を読む。
 京都に東京を当てはめた場合、どこはどこになるか、というのをまとめた本である。たとえば京都の岡崎であれば、大規模な文化施設が集中し、緑や広場も多くて文化的な交流が盛んな場というイメージで、これは東京の上野に似ているとなる。もちろん細かいことを言えば異なる点も多いのだが、あくまでザクっとしたイメージである。

 もし京都が東京だったらマップ

 本書はほかにも赤羽と四条大宮、北山と代官山、京都駅と品川駅など、実に四十以上の例を挙げて比較している。
 ただ、これを以って京都と東京が同じだと勘違いしないように。そもそも京都ほどの大都市であれば、都市が昔から備えている機能や文化はだいたい揃っているものだ。これは京都に限らず、大阪や札幌、名古屋、福岡だって同様である。だから似たようなエリアをはめ込もうとすれば、正直いくらでもはめ込める。
 だから著者の狙いは双方の都市機能が同じだと証明することではない。京都でこれから暮らそうとする人に対し、東京の街にたとえることで京都の街の特徴をわかりやすく伝え、移住の参考にしてもらおうということなのだ。本書はある意味、京都人による京都のガイドブックなのである。

 本書の後半はすべて、そんな京都での暮らし方について書かれており、実はここがそれほど面白くないし、おそらくあまり役に立たないのが残念。ぶっちゃけ不動産屋の口上みたいになってしまっている(実際、著者はそちら関係の方である)。
 また、本書の一番の落とし穴は、赤羽と四条大宮、北山と代官山がいくら似ているといっても、その質量に大きな差があることだ。先程、京都が大都市とは書いたものの、東京に比べるとその規模はかなり小さく、東京の街のイメージのまま京都を訪ねると、その狭さに驚くかもしれない。場所によっては100メートルも歩けば、違うエリアに入ってしまうぐらいだし。
 また、精神的な意味でよそ者が暮らしやすい場所、暮らしにくい場所があるのが京都。京都移住はそういう観点抜きにして語るべきではなく、旅行ならまだしも移住を考えるなら、本書はかなり力不足といえる。

 というわけでカジュアルな新書という性質もあるだろうが、あまり真面目に旅行や移住の参考として使うのはお勧めできない。あくまでネット上の遊びの延長として読むぐらいでちょうどよいだろう。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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