マイクル・コナリーの『素晴らしき世界』をとりあえず上巻まで。
ハリー・ボッシュ・シリーズの前作
『汚名』の続編であり、かつ
『レイトショー』の主人公・夜勤専門の女性刑事レネイ・バラードがボッシュと競演するという一作。
『汚名』でハリー・ボッシュが救った麻薬中毒者エリザベス。本作のストーリーは彼女の娘が殺害された過去の事件を追うというもの。したがって『汚名』を読んでいた方が人間関係などは深いところまで理解できるけれど、事件としては別物なので、本作から読んでもそこまで困るということはないだろう。
むしろレネイ・バラードが初登場した『レイトショー』を読んでいた方が、ボッシュとバラードそれぞれのキャラクターを客観的に受け止めることができてよいように思う。とはいえ、こちらもストーリー的には特に影響はないけれど(笑)。

ちょっと話は変わるけれど、シリーズものは本来ならやはり一作目から読みたいところではある。ボッシュもののように、作品ごとに時間の経過があるものは尚更である。ましてやコナリーの場合、ボッシュもの以外にもリンカーン弁護士をはじめ複数のシリーズがあって、それらが同じ世界の中で描かれている。本作のようにレギュラー・準レギュラーが共演する作品も多く、そういった登場人物のサイドストーリーで引っ張る部分もかなり大きいのだ。
とはいえ長く続いているシリーズともなると、すべての読者が一作目から読むのを期待するわけにはいかない。とりあえず代表作から入る人も当然いるだろう。ただ、一作目からとはいわないまでも、より作品を楽しめるキーとなる作品はやはりあるわけで。
そんなことを考えていると、コナリーの世界を俯瞰できるガイドブックがそろそろあっても良い頃だという気がしてきた。いったん作品全部の交通整理をして、途中からシリーズを読む人にも優しいコナリー・ワールドの歩き方である。
全作品とシリーズ紹介、登場人物の解説あたりをベースとして、相関図や事件年表、ロス周辺のマップ解説などなど、コナリー初心者がなるべく時間をかけずに世界を俯瞰できると一冊となればよい。
書籍が無理なら『ミステリマガジン』での特集でもいいのだが、コナリー作品の多くは講談社だから、それは難しいか。