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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 07 2021

連城三紀彦『私という名の変奏曲』(ハルキ文庫)

 連城三紀彦『私という名の変奏曲』を読む。
 世界的ファッションモデルとして活躍する美織レイ子。しかし彼女は十八歳のとき交通事故で顔に大怪我を負い、アメリカでの整形手術によって完璧な美貌を手に入れた過去をもつ。そんな彼女が今もなお憎む七人の男女がたが、その七人もまたレイ子を激しく憎んでいた。
 そしてあるとき。レイ子は七人の誰かによって自分を殺させるという計画を実行に移す……。

 私という名の変奏曲

 これはまた何というか(笑)。連城三紀彦の超絶技巧が炸裂する一作ではあるが、あまりの力技に読後はしばし呆然という感じである。
 導入からかなり引き込まれる。モデルのレイ子がマンションにある人物を招いている。その目的は、なんと訪問者に自分を殺害させるためなのだ。なぜそのような状況が発生しているのか、この時点ではまだ詳細は不明だが、緊迫した雰囲気だけはヒシヒシと伝わってくる。これはもしかしてフランス風の心理サスペンスな感じかと思いきや、章が変わって警察視点や容疑者視点に移ると、その予想はまったく的外れであることがわかる。
 驚くべきことに、レイ子を恨む七人の男女全員が、自分が犯人だと思っているのである。ストーリーはそうした容疑者たちの語りと騙りで展開する。もうあざとさの極致である(苦笑)。

 この大技を許容できるかどうかが本作評価の分かれ目だろう。正直、管理人としては本作はやりすぎの感が強く、著者の他の作品よりは無理があると感じた次第。とにかく凝りすぎるあまり、仕掛け自体に「やられた」という爽快感があまり感じられないのである。
 美しくもあり儚くもあるドラマの豊かさ、文章の美しさ+巧さには相変わらず唸らされるので、もちろん十分に素晴らしい作品ではあるが、今回は少々好みから外れた感じだ。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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