湘南探偵倶楽部さん復刻の短篇「決闘街」を読む。こんな話。
登山スキーに出かけた三人の学生たち。表面的には友人だが、正反対の性格の違いから野々宮と田代はお互いをライバル視しており、野々宮と吉本はある女性をめぐって三角関係にあった。
そんな密かな緊張状態のなか、野々宮は雪山の中腹でカンジキが脱げ、動けなくなるという事態が発生。その瞬間、田代と吉本に殺意が芽生え、二人の手によって野々宮は崖下へ落下させられてしまう。
田代と吉本は事故として報告したが、やがて二人は真相を知るお互いの存在が邪魔になり……という一席。

殺人者となった主人公たちは犯行が暴かれることを怖れ、悶々と悩むあたりがいかにも大下宇陀児らしい心理描写で読ませる。
ストーリーも悪くない。物語は上の展開からタイトルどおりの「決闘」に雪崩れ込んでいくのだが、そこで一捻り入れて意外性も持たせるなど、単なる心理サスペンスで終わらせないところもよい。
加えて真相を明らかにせず、リドルストーリー的にまとめているのも気が利いている。ただ、リドルストーリーであることを強調したかったのか、最後の説明が過剰すぎて、あまりリドルストーリーになっていないのがちょっと残念。とはいえ全体としてはまずまず満足のいく一作であった。
なお、一箇所、気になるところがあったが、勘違いの可能性もあるので、ここでは伏せておく。