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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

レオ・ブルース『ビーフと蜘蛛』(湘南探偵倶楽部)

 この週末は法要で京都へ。こちらが施主側なので多少は気をつかうが、このご時世なのであくまでこぢんまりと開催し、かつ粛々と進めて、最後に親族一同で食事会をしておひらき。それほど忙しいわけではないけれど、ひとりの時間はそうそう取れるはずもなく、読書は行き帰りの新幹線程度である。ただ、それもほとんど寝て過ごしてしまったが。

 というわけで読書中の本をまだ読み終えておらず、そちらはいったん中断して、湘南探偵倶楽部の小冊子を消化する。ものはレオ・ブルースの『ビーフと蜘蛛』。
 なぜかブレイクするところまではいかないが、ROM叢書からは先日『死者の靴』も届いているし、扶桑社では『レオ・ブルース短編全集』が進行中。消えそうで消えないレオ・ブルース紹介の灯というところだが、でも実力と面白さを考えれば、もう少し人気が出てもおかしくない作家のはず。日本で売れないのが本当に不思議である。

 ビーフと蜘蛛

 さて、今回の短篇はこんな話。レンガ工場を経理するウィリアム・ピトケインが車で出勤巣途中に行方不明となり、30マイル離れたところで他殺死体となって発見された。容疑者は金に困っており、ウィリアムの全財産を相続した弟のオズワルドだが、彼には鉄壁のアリバイがあった。ビーフ巡査部長は蜘蛛の習性にヒントを得て謎を解明する。

 ショートショートぐらいの短い作品。ビーフ巡査部長の発想と着眼点がミソではあるが、そこまで凝った内容ではなく、後出しの説明なので本格としてもフェアではない。やはりあまりに短い作品では、レオ・ブルースの良さは発揮しにくいかな。
 トリックの性質や謎の解明方法などを考慮すると、おそらく本作は倒叙にしたほうがストーリー的には面白く読めたように思う。『からし菜のお告げ』でもそんな印象を受けたのだが、こと短篇に関してはビーフ巡査部長ものはコロンボと相通ずるところがあるような気がする。

※2021.12.21追記
ビーフ巡査部長がビーフ部長刑事になっていると、コメントで指摘を受けたので慌てて修正。頭では巡査部長とキーを打っているつもりだったが、まったく無意識に部長刑事と打っていたようだ。恐ろしい。
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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