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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 01 2022

マイクル・Z・リューイン『カッティングルース(上)』(理論社)

 早川書房から年明け早々に今年のラインナップがアップされていたが、その中でちょっと驚いたのはマイクル・Z・リューインの新刊が三冊も出ることだった。まあ、そのうちの一冊は『沈黙のセールスマン』の復刊なんだけれど、そのほかの二冊は完全な新作で、アルバート・サムスン・シリーズの最新連作中編作も含まれているという。
 個人的にはネオ・ハードボイルドばかり読んでいた時期もあり、邦訳されたリューインはもちろん全作読破したぐらいなのでこれは嬉しいかぎり。などと書いたところで、実は一作だけ読んでないことを思い出した。ノンシリーズでYA向けの作品ということもあり、長らく積んでいた『カッティングルース(上・下)』である。新刊をリアルタイムで買っていたので、なんと十六年ものの積読(笑)。新刊が発売される前に片付けておこうと、ようやく読み始めた次第。

 カッティングルース(上)

 とりあえず本日は上巻まで読み終えたが、これは傑作の予感……というか上巻の段階で傑作認定していいぐらいだ。
 物語は19世紀末と19世紀初めの二つの時代が交互に描かれる。19世紀末のほうは男装の女性野球選手ジャック・クロスが、友人を殺害した犯人を追ってロンドンへ渡るという冒険譚。片や19世紀初めの物語は、クローデット(実はクロスの祖母)という女性の数奇な人生を描いてゆく。上巻の段階では、このクローデットのパートがとにかく素晴らしい。当時の未熟なアメリカの状況の中で、幼くして孤児になったい彼女がいかにして辛苦に耐え、打ち勝っていくのか。その境遇も次々と変化し、一気に引き込まれた。
 もちろんクロスのパートも悪くない。今後、こちらがどのように展開するのか、更なる期待を込めて下巻突入。



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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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