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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 09 2023

ポール・アルテ『星を盗む者』(行舟文化)

 昨日読んだ『吸血鬼の仮面』に付録としてついていた小冊子『星を盗む者』を読む。オーウェン・バーンズものの短篇である。

 齢七十をを超えた名探偵オーウェン・バーンズと相棒のアキレスが田舎町へ小旅行に出かけたときのこと。昼間は自然を散策し、夜はビストロで星空を見ながらワインを楽しむ二人に、一人の男が話しかけてきた。子供の頃、この満天の星空からすべての星が消えてしまった体験をしたというのだ。しかも、星が見えなくなったその時、隣にいた友だちが何者かに襲われて死亡したというのである……。

星を盗む者

 行舟文化のアルテ本についてくる小冊子の短篇はけっこう楽しみにしていて、変にこねくり回していない分、素直に楽しめるものが多い。まさにアイデア一発勝負である。何なら本編の長篇より面白かったりするときもあるくらいだ。
 ただ、毎度書いていることだが、こういうサービスを続ける版元の体力が心配である。小冊子はなくともアルテは買うので、あまり無理はなさらぬよう。

 さて、肝心の中身だが、今回は大はずれ(笑)。星が消えるという謎は最初こそ素敵に思えるが、実際に読み進めるともう嫌な予感しかなく、ラストでは予想したとおりのネタであった。正直よくこのトリックで書いたなという代物で、これでは昭和の子供向けミステリのレベルである。アルテの短編はいいぞと褒めた途端にこれだから、アルテは油断ならない(笑)。

 ということで行舟文化さんにはそろそろアルテの短篇集を検討しても良い頃ではなかなろうか。小冊子分をみても(今回は今ひとつだったけれど)、全体的に打率は悪くないと思う。期待しております。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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