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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 11 2023

ピーター・スワンソン『8つの完璧な殺人』(創元推理文庫)

 ピーター・スワンソンの『8つの完璧な殺人』を読む。サスペンス、とりわけ叙述トリックを活かした作品で人気を博している作家の最新刊。本作はちょっといつもとは異なる雰囲気で始まり、これはいよいよ異なる趣向で攻めてきたかと思いきや。

 まずはストーリー。新刊も古書も扱うミステリー専門書店〈オールド・デヴィルズ・ブックストア〉。店主マルコム・カーショーは二人の従業員を雇い、大儲けはできないもののマニアには知られた店として、地道な経営がなされていた。
 ある日、マルコムのもとへFBI捜査官グウェンが訪ねてくる。彼女は店のブログに公開されている“完璧な殺人”という記事について問い合わせてきたのだ。それはマルコムが選んだ“完璧な殺人”を描いた8つのミステリ——『ABC殺人事件』、『見知らぬ乗客』、『赤い館の秘密』、『殺意』、『殺人保険』などなど——を紹介したリストだった。
 驚くべきことに、そのリストに載った作品と似たような手口で殺人が行われているという……。

 8つの完璧な殺人

 この導入がすべてだろう。言ってみれば8作のミステリを用いた見立て連続殺人を扱うのだ。作品はどれも実際に有名なミステリばかり(中には日本の読者に馴染みのないものもあるが)。ネタバレも山ほどあるので、当然ながら読者もそれらをほぼ読んでいる必要があり、畢竟、それなりのミステリ歴がある人でないと読むのはオススメできない。
 しかし逆に言えば、海外ミステリをそこそこ読んでいるなら、8作以外にも大量の作家、作品に言及があるので、その意味では非常に楽しく読めるだろう。

 ただ、今回の作品で注目したいのは、実はそういうマニアを喜ばせるような部分ではない。これまでのサスペンスとは違い、本格ミステリ的なスタイルをセレクトしたことにあるのだ。あくまでFBI捜査官の相談に乗るような形で、つまり安楽椅子探偵のような形でストーリーが展開するのである。
 個人的にはこれまでの作品が叙述トリックに終始し、あざとすぎる点が好みではなかったので、今回こそはミステリマニア限定みたいな話とはいえ、ようやく正統派で勝負するのかと安心していたのだが……。

 やはりピーター・スワンソンである。中盤からとんでもない方向にストーリーが転がり出す。もうね、何かあるとは多少予想はしていたけれど、まさかこの路線で来るとは。これから読む人の興を削ぐと思うので、もう何も書けないけれど、いやあ、やはりピーター・スワンソンである。

 もうね、著者のドヤ顔が目に浮かぶようで、気に入らない部分もないではないが、今回ばかりは著者の上手さとあざとさに脱帽である。


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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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