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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 11 2023

エドワード・D・ホック、他『Re-ClaM eX vol.5』(Re-ClaM eX)

 海外のクラシックミステリを専門にする同人誌『Re-ClaM Vol.11』とその別冊の短編アンソロジー『Re-ClaM eX vol.5』が届いたので目を通してみる。

 ReClaM eX Vol5

 本誌の『Re-ClaM Vol.11』は、アメリカのミステリ界において多大な作品と貢献を残した「ダブルデイ・クライムクラブ」の特集で、アメリカの探偵小説などの研究家エド・ハルスによるエッセイを掲載している。ダブルデイについては名前こそ知ってはいるが、その内幕や歴史などまったく知らなかっただけに、これはなかなか面白い読み物だった。
 「ダブルデイ・クライムクラブ」が素晴らしい作品を多く出版できたのは、もちろん編集者の力によるところは大きいのだが、個人的には興味深かったのは、初期の出版ビジネスへの意欲である。経営陣は売り上げを伸ばし、安定させるべく、さまざまなアイデアを出し、新たなシステムを構築していく。たとえば探偵小説のブランド化であったり、定期購読制を始めたり、印刷や製本も含めてワンストップで行うようにしたり、などなど。今でも行われているようビジネスモデルを次々と打ち出していたのだ。
 ハードで独裁的な業務体制方ら反発も少なくなかったようだが、少なくとも初期のこういう展開があるからこそ、のちの繁栄はなかったはずで、これには驚くばかりである。
 また、本誌でもうひとつ面白かったのがミルワード・ケネディの掌編「愚か者の選択」。完全犯罪を見抜いた貧乏医師が犯人と対峙するが……という内容で、短いながらも終盤に二転三転する展開が見事。


 『Re-ClaM eX vol.5』は以下の短編三作を収録。

エドワード・D・ホック No Good at Riddles「レオポルド警部と深夜の放火」
エドワード・D・ホック The Spy Who Had Father in Double-C「ダブルCを信じたスパイ」
シリル・ヘアー The Death of Amy Robsart「エイミー・ロブサートは死んだ」

 ホックのレオポルド警部は久しぶりに読んだが、相変わらず手堅い。ホックの他のシリーズものと違い、本格でありながら警察小説の雰囲気も大事にしている感じで、そこまで驚きはないけれどクセになる。

 「ダブルCを信じたスパイ」もホックのシリーズもの。暗号解読の専門家ジェフリー・ランド・シリーズの一作で、本作も例によって暗号もの。ただ、本作のネタは日本人には少し辛い。クリスチャンならわかるのだろうか?
 少し話は逸れるが、ホックのシリーズキャラは、怪盗ニックとかサム・ホーソーン、サイモン・アーク、コンピューター検察局はほぼほぼ翻訳されているが、それ以外のシリーズが完全放置なのはもったいないかぎりである。せめてレオポルド警部ものぐらいは、長らく品切れ中の講談社文庫『こちら殺人課!レオポルド警部の事件簿』と合わせて本にならないものだろうか。

 シリル・ヘアーの短編も嬉しい。緻密なプロットで登場人物の行動などすべてが計算されている印象。たまたまだろうけれど、なんとなくトリックの構成が「レオポルド警部と深夜の放火」と似ているイメージ。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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