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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 11 2023

三崎律日『奇書の世界史』(PHP文庫)

 このブログでは小説やミステリ関係以外の本の感想はあまりアップしていないのだが、実は息抜きに読んでいる雑学本もけっこうある。本日はそんな中から三崎律日の『奇書の世界史』がちょっと面白かったので取り上げてみたい。

 奇書の世界史

 内容はタイトルどおり世界史に影響を与えた奇書を紹介するというもの。ミステリファンであれば、奇書といえば『ドグラ・マグラ』や『黒死舘殺人事件』を思い浮かべるだろうが、本書で扱うのはそういう得体の知れない奇書ではない。いま読むと確かにトンデモ本だが、書かれた時代においては世の中に大きな影響を与えた書物である。また、その反対に当時は悪書として非難されたが、実は名著だった本。そういった本の数々を紹介している。

 たとえば魔女狩りに関するハンドブックとも言える『魔女に与える鉄槌』。野球がいかに若者にとって有害なものか解説した『野球と其害毒』。貧困層において増え続ける子供とその子供に悩まされて子殺しまで多発する状況を解決するために、富裕層のために子供を食糧として販売せよと提案する『穏健なる提案』などなど。
 まさにトンデモ本ばかり。『穏健なる提案』の内容などは俄かには信じられないほどだが、これを書いたのがあの『ガリバー旅行記』を書いたスウィフトの作品というのだからびっくりである。いや、考えたら『ガリバー旅行記』だって実は後半はかなりのトンデモ本だから、むしろ当然なのかも。

 まあ、そんな本の中身を読むだけでも普通に面白いのだが、本書がいいなと思ったのは、その本が世間でどのように評価されたか、著者がなぜそのような本を書いたのか、そういった周辺のストーリーも一緒に解説されているところだ。先ほどの『穏健なる提案』も、実は真面目に訴えているのではなく、母国の現状を嘆くあまりの怒りや諦め、皮肉などがないまぜになったもので、本の内容だけで判断すべきものでないことがわかる。

 総じてテレビの情報番組を観るノリというか、そういう感じで楽しめる一冊だろう。本書はもともと動画でアップされていたものを文章に再構成したものらしいので、動画のリズムやテンポなどが説明のわかりやすさや簡潔さに反映されているのかも知れない。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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