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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 11 2023

森咲郭公鳥、森脇晃、Kashiba@猟奇の鉄人『Murder, She Drew Vol.4 Quick frowned A. B. Cox jumps over the lazy dog』(饒舌な中年たち)

 森咲郭公鳥、森脇晃、kashiba@猟奇の鉄人の三氏によるミステリ同人誌〈Murder, She Drew〉の最新刊『Murder, She Drew Vol.4 Quick frowned A. B. Cox jumps over the lazy dog』を読む。
 同人誌とはいえ、すでに海外クラシックミステリのファンであれば知らない者はいないであろう絵ときガイドブックであり、ディクスン・カーの別冊を含めるとこれで六冊目。今回は嬉しいことにアントニー・バークリーが産んだ探偵、シェリンガムとチタウィックの登場長篇12作を取り上げている。

 Murder She Drew Vol4_Quick frowned A B Cox jumps over the lazy dog

 内容はいつもどおり。作品ごとに殺人現場や舞台となる館のイラストを掲載し、それをもとに三人による鼎談を行う。鼎談は例によって、通常編とネタバレ編との二部構成である。
 この辺りについては前作の『Carr Graphic Vol.2 In the midst of the golden age』の感想で少しまとめたので、興味がある人はそちらを参考にしてほしい。
 なお、付け加えるとすれば、バークリーはあまり犯罪現場や世界観の創造に力を入れるタイプではないので、従来のカー作品などに比べると、だいぶイラスト作成に苦労したようだ。『毒入りチョコレート事件』なんて『最後の晩餐』みたい(笑)。

 それはさておき、本書で何より注目すべき点は、単純にアントニー・バークリーのシェリンガムとチタウィックの全登場長篇を取り上げたことだろう。我が国でもそれなりに海外ミステリ作家のガイドブックがあるけれど、いかんせんほとんどがビッグネームばかりである。おそらく作家数にして二十名にも満たないはずだ。まあビジネスとして見れば無理のない話ではあるのだが、バークリーのような大御所でも、これまでガイドブックや伝記等でまとめられたことはなかったのである。
 それが同人誌とはいえ、こうしてその業績を時系列で眺められるのは非常にありがたい。個人的にお気に入りの作家は、刊行順で読みたい派なのである。その作家の文章やミステリとしての質や方向性など、流れで掴んでおきたいのだ。ただ、不幸にもバークリーは評価が遅かったこともあって、原書の刊行順と日本での刊行順はバラバラ。面白い作品を書いていることはわかっても、実は「点」でしか理解していない。それでは作家としての真の実力を理解したことにはならないだろう。
 そういったモヤモヤを本書は晴らしてくれるわけである。多くのミステリファンがこれでバークリーを再読したくなったのではないか、そう思わせる一冊である。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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