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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 12 2023

ジェレット・バージェス『不思議の達人(上)』(ヒラヤマ探偵文庫)

 「クイーンの定員」の五十番目に選ばれた、ジェレット・バージェスの『不思議の達人』を読む。けっこうボリュームがあるようで、本日はその上巻の感想である。まずは収録作。

Missing John Hudson「ジョン・ハドソンの失踪」
The Stolen Shakespeare「盗まれたシェークスピア」
The MacDougal Street Affair「マクドゥーガル街事件」
The Flashawe Ghost「ファンショーの幽霊」
The Denton Boudoir Mystery「デントンの婦人の間の謎」
The Lorsson Elopement「ロースソンの駆け落ち」
The Calendon Kidnapping Case「カレンドン誘拐事件」
Miss Dalrymple's Locket「ミス・ダーリンプルのロケット」
Murder Thirteen「十三」
The Trouble with Tulliver「タリヴァー事件」
Why Mrs. Burbank Ran Away「なぜバーバンク夫人は逃げたのか」
Mrs. Selwyn's Emerald「セルウィン夫人のエメラルド」

 不思議の達人(上)

 本作の探偵役は預言者にして占い師のアストロである。その活躍する作品が発表されたのは1900年ごろで、いうまでもなくホームズの活躍に影響されて誕生したライバルの一人だろう。ただ『不思議の達人』というベタベタのタイトルや探偵役の職業だけを見てしまうと、なんとなく虚仮脅し的というか胡散臭い感じがして、正直面白そうには思えない。
 ところが、いざ読み始めると意外なリーダビリティの高さに驚いてしまった。といっても謎解きとしてはそこまでのレベルではないのだが、設定やストーリー作りが上手いという印象である。クリスティのクイン氏とかパインとか、ちょっとあの辺を思い出した。

 そもそもアストロの本職が占い師だから、大きな事件はあまり持ち込まれない。悩み事があるから占ってもらおうぐらいの話が多いのだが、アストロはそれに対して占うわけではない。実は鋭い観察力と推理力を持って事実を探り当てるのである。ホームズが来客の素性をすぐに推理してみせるアレを、オカルトの力で当ててみせる体にしているわけである。
 犯罪現場にもちゃんと赴き、その場での波動を直接感じることが必要などと宣いながら、しっかりとホームズばりに現場を調査する。そうして論理的・科学的に謎を解決した暁には、事実が水晶玉に浮かび上がってましたといって一件落着。こうしてアストロは探偵としてではなく、占い師、預言者としての名声をあげ、ついには警察も協力を求めるようになる。
 探偵術をあえてオカルトにして稼ぐというパターンが、ミステリの逆張りのようでそこが面白い。

 アストロの占い師モードと探偵モードの切り替えぶり、助手のヴァレスカ(これまた謎多き美女)とのやりとりなども含め、とりあえず一作目の「ジョン・ハドソンの失踪」で全体のイメージを掴みやすく、これが気に入れば、どの作品も失望することはないだろう。先ほども少し書いたけれど、謎解きはともかく娯楽読み物としては悪くない短篇集である。
 特に気に入ったものとしては、「カレンドン誘拐事件」が、当時としては(おそらく)画期的な身代金の受け渡し方法を用いていて面白かった。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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