fc2ブログ
探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 02 2024

山沢晴雄『死の黙劇』(創元推理文庫)

 久々の山沢晴雄作品、短篇集の『死の黙劇』を読む。日本評論社から出た初の作品集『離れた家 山沢晴雄傑作集』を読んで以来ではないか。まずは収録作。

「砧最初の事件」
「死の黙劇」
「銀知恵の輪」
「金知恵の輪」
「見えない時間」
「ふしぎな死体」
「ロッカーの中の美人」
「密室の夜」
「京都発”あさしお7号”」

 死の黙劇
▲山沢晴雄『死の黙劇』(創元推理文庫)【amazon

 山沢晴雄といえば、生涯アマチュアを通したことや本格一辺倒の作風で知られている。とりわけ徹底的なまでにパズル性にこだわったことが最大の特徴であり、自ら「手品文学」と自作を表したぐらいなので、ガチガチの本格好きな人には根強い人気のある作家だ。
 ただ、アマチュアということもあって発表の場も非常に限られ、『離れた家 山沢晴雄傑作集』が出るまでは本当に読むことすら難しい状況があった。それが今ではこうして文庫で読めるのだから、まずは慶賀すべきことである。
 ただ、決して読みやすい作品ではない。特に短いものほど複雑なネタを詰め込んでおり、やり過ぎの感は強い。基本的にはトリックありきで作品を書いていることもあって、小説としての味わいや潤いに乏しい面もあり、一般ウケは難しいイメージである。単独で商業出版がなかなかされなかったのは、おそらくそういったことも影響しているだろう。

 とはいえ、本格好きなら一度は読んでおきたい作家であることも確か。本書は『離れた家 山沢晴雄傑作集』と多少収録作に被りがあるものの、その全貌が理解できるよう初期と後期の両方から作品が採られている。再読作品が意外に多かったのだけれど、すっかり内容を忘れていたので、問題なく普通に楽しめてしまった(笑)。以下、簡単に簡素王など。

 初っ端の「砧最初の事件」は強烈である。プロット、トリックともに複雑で、著者の真骨頂。続く表題作の「死の黙劇」も複雑さでは負けていないし、「銀知恵の輪」はアリバイトリックがお見事。シンプルなはずの事件を二重三重に仕掛けてくるところがさすがで、この冒頭三作で一気に引き込まれる。ちなみに「銀知恵の輪」という題名はなんのことかと思ったが、有名な詰将棋の問題のタイトルから取っているとのこと。

 「金知恵の輪」も同じく、詰将棋の問題から題名が付けられている。ちょっと出来は落ちるが、犯人の視点から描かれており、こういうスタイルも書くのだという驚きもあり。
 「見えない時間」、「ふしぎな死体」も欠点がやや目立つ。「金知恵の輪」もそうだけれど、これら三作は九十年代という後期の作品で、そのあたりが関係している可能性もないではない。

 「ロッカーの中の美人」は非常に短い作品だが、いつもとは逆に、それが結果的にいい方に出ていて嫌いではない。ラストの「密室の夜」、「京都発”あさしお7号”」も悪くない。特に後者は質的ボリューム感が強く、元々は百枚ほどあった中篇作品を六十枚ほどに削ったものだということで、それも納得。

 まとめ。これが山沢晴雄の作風といえば作風であり、そこに感心はするのだけれど、無理やりに詰めた感じがいつももったいなく感じてしまう。もしかすると著者は長篇の方が向いていたのかも、ということで次は本書に続いて刊行された『ダミー・プロット』を読んでみたい。

« »

02 2024
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー