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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 02 2024

山沢晴雄『ダミー・プロット』(創元推理文庫)

 短篇集『死の黙劇』に続いて、長篇『ダミー・プロット』を読む。山沢晴雄は四作の長篇を残しており、本作はその第二作、著者が自ら代表作に推す作品である。

 こんな話。私立探偵・砧順之介が友人の岸浜竜二から紹介された妻の涼子は著名な服飾デザイナーだが、ミステリや将棋にも詳しく、砧に不思議な印象を残した。そんな彼女は、ある時、自分にそっくりな女性・柴田初子を見つけ、初子を自分の替え玉に仕立てようとする。
 そんな頃、ルポライターとは名ばかりで、その実は入手した情報をもとに強請を働く布施香子。彼女は役人の大幹昌雄と占い師・壬庚子のホテルでの密会写真を撮り、早速、強請を開始する。
 一方、商社社員の風山秀樹は、殺人容疑のピンチに陥った友人の小島に泣きつかれ、アリバイ工作を検討する。
 三者三様の思惑が、何の因果かそれぞれが導き合い、連続殺人事件へと発展してゆく……。

 ダミー・プロット
▲山沢晴雄『ダミー・プロット』(創元推理文庫)【amazon

 『死の黙劇』の感想で、「著者の短篇はやりすぎ、詰め込みすぎの感が強く、小説としての味わいや潤いに乏しい、長篇の方が向いていたのかも」なんてことを書いたのだけれど、初めて山沢晴雄の長篇に接し、これはけっこういい線をついていたと実感。もちろん、それは本作が予想以上に楽しめたからであり、短篇で感じた欠点をほとんど意識することもなく読み終えることができた。

 まず導入がいい。群像劇かと思うようなさまざまなキャラクターのエピソードで幕を開け、それがどのように絡み合うのかという興味がある。これがサスペンス小説とかならむしろ常套手段だったりするし、本格でも「嵐の山荘」系であれば、否応なく登場人物は集まるしかない。だが、本作はガチガチのトリックメーカーになる作品だから、そんな緩い手は使うまい。
 実際、まったく結びつきようがないと思われる三つのエピソードであり、まずこれをどのような事件に持っていくか、という点だけでも惹かれること請け合い。

 そして、中盤で徐々に明らかになる関連性。何となくボヤーとしていた手がかりの輪郭が明らかになり、ラストではそれぞれが真実に向けて収斂されていく快感が素晴らしい。中でも核になるのが、涼子と初子による二人一役であり、それが事件の中でどのような意味を持ってくるのか。著者が最初から「二人一役」という大きなヒントを提示しているのに、管理人などはすっかり騙されてしまった(苦笑)。

 ともあれこうして著者の代表作が読めたことは実に喜ばしい。残る三長篇もぜひ期待したいところである。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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