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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 02 2024

クリフォード・ナイト『〈サーカス・クイーン号〉事件』(論創海外ミステリ)

 クリフォード・ナイトの『〈サーカス・クイーン号〉事件』を読む。黄金時代に書かれたハント・ロジャーズ教授を探偵役とするシリーズの一作。
 著者の作品はかつて原書房から刊行された『ミステリ講座の殺人』を読んだことがあり、そちらはミステリ作家が自宅で開催したミステリ講座の最中に発生した殺人事件を描くというストーリーであった。ただ、設定としては魅力的ながら出来そのものはその域に及ばず、さて本作はいかに、というところである。

 まずはストーリー。貨物船一隻に丸々サーカス団を詰めこみ、寄港先を興行して回るカービー・マーティン・サーカス一座。ある時、その団長カービー・マーティンが死亡する。サーカス団で飼育するゴリラによって起こされた不幸な事故かと思われたが、カービーの後を継ぐ姪のドリス・マーティンが乗船したことで、さらなる悲劇が発生し……。

 〈サーカス・クイーン号〉事件
▲クリフォード・ナイト『〈サーカス・クイーン号〉事件』(論創海外ミステリ)【amazon

 本作も設定はなかなか面白い。サーカス一座を乗せた船内で繰り広げられる事件という、なかなか凝った設定である。外部のものが理解しにくい独特のショービジネスの世界であり、そこで働く人々も変わり者や一般社会に馴染めない者が多かったりと、まずその世界観が魅力的である。
 普通だとサーカスのスターや演者をメインに持ってきたくなるところだが、著者はサーカスの経営にスポットを当て、いわゆるバックヤード側、管理や事務方スタッフのドタバタを中心に描いているのが珍しくてよかった。そこまで詳しいわけではないが、お仕事ミステリという読み方も楽しい。

 これらだけでもかなりのアドバンテージではあるのだが、著者はそこに甘えることなく、犯人からと思われる脅迫状をアクセントとして効果的に挿入し、連続殺人劇としてテンポよく仕立て上げる。リーダビリティは全体に高く、決して退屈はしないストーリーである。

 ここまでやってくれたら、あとはそれなりの犯人を用意してくれれば合格点は楽勝でクリアできるところなのだが、この著者は残念ながら、どうにも肝心のミステリ部分がいまひとつ。
 サーカス一座の重要人物を次々と殺害しておきながら、この犯人と動機ではあまりに絵にならないし、読者が思わす悔しがる手がかりも提示できていない。お話作りのアイデアに上手さはあるのだけれど、それを本格ミステリとしてフィニッシュさせる技術というか山っ気にかけるというか。そこが惜しい。

 本書の読後、そんなことを思いながら解説を読んでいると、そこにも「クリフォード・ナイト作品は本格ミステリのバイプレーヤーという評価軸を外した方が楽しめるでは」というようなことが書かれていて、そうだよね、と納得した次第である。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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