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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


スティーヴン・キング『ファイアスターター(下)』(新潮文庫)

 本日も出勤。久しく休みらしい休みをとっていない気がする。休みとかいっても徹夜明けとかばっかり。昼間寝てしまったら終わりじゃん。

 本日の読了本はスティーヴン・キング『ファイアスターター(下)』。
 まあまあ面白かったけれど、いろいろ不満もあるなぁ。
 上下巻とはいえ、最近の作品ほどのボリュームはないので、ずいぶんすっきりした印象を受ける。ただしキングの場合、総じて初期の作品ほど構成がしっかりしているものの、その分コクが少ない気がするのだが、どんなもんだろうか?

 この作品は不要な超能力をもったチャーリーが、世界(世間)とどのように折り合いをつけるかがメインテーマである。そしてそのテーマのなかに個と国家の関わり、科学の意義、マイノリティの問題、性的な問題などが見え隠れする。基本はエンターテインメントなので、深読みするのも単純に楽しむのも読者の自由だ。ただ、キング自身が書き込むべきところをすっ飛ばして書いているため、どうにも中途半端である。シーンのひとつひとつが弱い、とは言い過ぎだろうが、あまり突っ込まずありがちな形で落ち着いている。それが、コクが少ない、と感じた理由でもある。
 「そんな偏屈な読者にならず、もっと単純に楽しんでよ」とキングが考えていたかどうかは知らないが、ラストを読む限りではキングだって読者に問いかけているのだ。あなたならチャーリーとどうつきあうのかと。あれではハッピーエンドとは言えないし、チャーリーに明るい希望があるのかどうかもハッキリとはしていない。あそこで読者が何らかの自分なりの答えを見つけないと、読んだ甲斐がないというものだ。
 つまり、その問いを読者に投げかけながら、その問い自体が説明不足だった。『ファイアスターター』はそんな作品ではなかったかと。面白いことは面白いんですけどね。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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