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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

カレル・チャペック『ロボット』(岩波文庫)

 初詣をすませたあと、『ショコラ』と『猿の惑星』をレンタル。実は映画館で『ハリー・ポッターと賢者の石』を観ようと思ったのだが、すごい行列に早々と脱落。あっさりビデオに切り替えたわけだが、いやあ、『ショコラ』はよかった。
 こういう食べ物で心和ますという手はけっこう好み。『バベットの晩餐会』もそのひとつかと思うのだが、美味しいものや美しいもの、本能に訴えるものを素直に受け止められない人生なんて、個人的には考えられない。禁欲的、求道的な生活もそれはそれで美しいけれど、それだけでは結局は貧しい人生なのではないかなと考えたりした次第。

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 さて、本日の読了本はカレル・チャペック作『ロボット』。
 園芸本やら犬本などで最近は女性に人気のあるチャペックだが、この『ロボット』や『山椒魚戦争』をものにしたSF作家としての側面も忘れてはいけない。
 しかも「ロボット」という言葉は、チャペックが世に送り出しているのだから。一応造語にはなるのだろうが、元になる言葉には「労働」などの意味があるそうで、作品の内容も、労働者としてのロボットが資本家たる人類に反旗を翻す、というものになっている。

 ここまで書くと思い出されるのが、ティム・バートンの『猿の惑星』。何となく似てるのだ、設定が。それなのにこの差は何なんだ?
 ティム・バートン監督はアクションをふんだんに取り入れながら猿と人間の対立、つまり奴隷と支配者の確執を描いていくのに対し、チャペックはほぼ登場人物の会話や議論だけで話を進めていく(ま、戯曲だから当たり前っちゃ当たり前なんだけど)。で、上っ面だけを見れば『猿の惑星』の方がはるかに面白いはずなのに、実際はまったく逆。チャペックがセリフとユーモアの積み重ねで文明批判や科学主義などを問うていく様は、まさに圧巻の一言。それなのにバートンは最新のSFXとアクションの積み重ねで、あの程度のことしかできない。ハリウッドの娯楽作品といってしまえばそれまでだが、それならオリジナルを越える楽しさだけでも提供してくれよ、と言いたい。

 『猿の惑星』はティム・バートン監督なんで、けっこう期待していたのに、こりゃオリジナルの方が全然いいや。もう、最後のオチなんてまったく意味なし。あれをどんでん返しというのなら、何だってOKになるぞ。

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本書はロボットの原点、というより、そもそも「ロボット」という言葉は、本書の著者カレル・チャペック(あるいは彼の兄)によって発明されました。 本書では、テクノロジーについ ...
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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