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レオ・ブルース『骨と髪』(原書房)
読了本はレオ・ブルースの『骨と髪』。
歴史教師にして素人探偵としても知られるキャロラス。彼のもとへ校長の親類だというチョーク夫人が訪ねてきた。従妹アンが行方不明になったが、その犯人は財産を狙った夫の仕業だというのだ。ところが調査を進めるうち、不可解なことが起こる。アンに関する証言がまったくバラバラなのだ。ある者はアンが長身だといい、ある者は小柄でぽっちゃりしているといい、そしてまたある者は……。果たして事件の真相は?。
ミステリにクラシックブームが起こり、個人的にもっとも認識を新たにできたのがアントニイ・バークリーとこのレオ・ブルースである。とりわけレオ・ブルースは地味な作風ながら、毎回ひねくれた趣向を凝らしてくれ、それがむちゃくちゃツボなのである。意外な犯人とか驚愕のトリックとか、そういう驚きとはひと味違う、まったく予想外のサプライズをもってくるのが、ブルースの最大の魅力ではないだろうか。
本作もとにかく地味。ストーリーはほとんどキャロラスの聞き込み捜査で、派手な展開とはまったく無縁である。しかも伏線をけっこうガシガシ張ってゆくので、結末もけっこう想像しやすく、今作はだめかなと思っていたのだが……いやいや、実にお見事。読み終えたときに楽しくなる本格、いまどき貴重である。
残念ながらこの作品を最後にブルースの翻訳が止まっているようだが、どこかで出版予定はあるのだろうか。ここまできたら未訳作品もすべて読みたいのだがなぁ。
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Comments
ブルースは「ロープとリングの事件」と「骨と髪」を読みました。読んだ感じでは、たしかに面白くてよく考えられているミステリではあるものの、名作と称するにはいささか弱いような気がしたのも事実です。
だから無性に、傑作とされる「三人の名探偵のための事件」「死体のない事件」「結末のない事件」が読みたいのですが、図書館にはないわ古本屋にもないわビンボなわたしは買えないわで、当分読む機会が訪れるとは思えませんしくしく。
決して嫌いなタイプの作家ではないので、せめてビーフものだけでも文庫で全部出てほしいですね。
Posted at 17:42 on 04 24, 2009 by ポール・ブリッツ
『死の扉』は先月読んだばかりです。ふふふ。
私が未読なのは『結末のない事件』と『死体のない事件』ですね。今度読んでみます(^^;
Posted at 21:45 on 05 28, 2007 by Sphere
レオ・ブルースはほんとに全部読んでみたい作家の一人ですね。わたしゃキャロラスだろうがビーフだろうが、訳してくれりゃどっちでもけっこう。
ちなみに未読の邦訳では、とっておきの『死の扉』を残してあるんですが、なかなかもったいなくて読めないんですよね。
あ、ビーフものもかなりひねくれてますので、ぜひぜひ読んでみてください。Sphereさんなら絶対気に入りますよ。
Posted at 22:26 on 05 27, 2007 by sugata
私もこれ好きです。真相がわかったときに吹き出したくなるというか、大変だったろうなぁと同情したくなるところが(^^;
ブルースはビーフさんよりキャロラス・ディーンの方が作品は地味だけど好きで、ゴリンジャー校長が出てくるのが楽しみだったりします。なので個人的にはディーン・シリーズの翻訳を希望したいですね~。(と言ってもビーフものはけっこう未読なのですが・・)
Posted at 19:52 on 05 27, 2007 by Sphere
ポール・ブリッツさん
確かに大傑作というにはトリックが勝ちすぎている部分はあるんですが、これらのひねくれた作品で、高アベレージを残してるのは驚異です。
別に私は本格原理主義者ではありませんけれど(笑)、レオ・ブルースのトリッキーな作風だけは、ちょっと別格扱いにしたいぐらい好きですね。ビーフもの、ぜひお試し下さい。
Posted at 02:23 on 04 25, 2009 by sugata