- Date: Tue 12 06 2007
- Category: 国内作家 渡辺啓助
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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渡辺啓助『怪奇探偵小説名作選2 渡辺啓助集 地獄横町』(ちくま文庫)
『怪奇探偵小説名作選2 渡辺啓助集 地獄横町』を読む。
人の心の闇を描いた作家、渡辺啓助。本書は彼の初期の作品を集めた、怪奇ロマンに満ちあふれた短編集だ。
そもそも昭和初期という時代の探偵小説は、謎解きよりも怪奇趣味、猟奇趣味が先行しがちで、これを称して変格とも呼ばれたわけだが、渡辺啓助の場合、正にその変格の道を歩み続けた。ときに「悪魔派」などと称されたように、彼の描く登場人物たちの多くは、何らかの特殊な性癖や思想に囚われた者ばかりだ。そんな囚われ人がいつしか限界点を超え、悲劇を招いてしまう瞬間を、渡辺啓助はいくつもの作品をとおして見せてくれるのである。
特別、美文というわけではないが、首つり死体やミイラ、偽眼の美女など、インパクトのあるモチーフを使って読者に鮮烈なイメージを与え、作品世界に誘導することに成功している。
また、作品の当たりはずれが大変少なく、高いレベルで粒がそろっているのも素晴らしい。きれいにまとまりすぎて、逆に物足りなく感じることもあるぐらいなのだが、そんななか、「血蝙蝠」の存在は貴重だ。どう考えても構成的に失敗している作品で、おそらく本書のワースト。しかし、こういう作品を読むと、逆に「ああ、読んでよかった」と思えるから不思議だ(笑)。ま、とにかくオススメの一冊ということで。
「偽眼のマドンナ」
「佝僂記」
「復讐芸人」
「擬似放蕩症」
「血笑婦」
「写真魔」
「変身術師」
「愛欲埃及学」
「美しき皮膚病」
「地獄横丁」
「血痕二重奏」
「吸血花」
「塗り込められた洋次郎」
「北海道四谷怪談」
「暗室」
「灰色鸚哥」
「悪魔の指」
「血のロビンソン」
「紅耳」
「聖悪魔」
「血蝙蝠」
「屍くずれ」
「タンタラスの呪い皿」
「決闘記」
ちなみに創元推理文庫で出る出ると言われ続けている実弟、渡辺温の作品集はどうなったんだ?
人の心の闇を描いた作家、渡辺啓助。本書は彼の初期の作品を集めた、怪奇ロマンに満ちあふれた短編集だ。
そもそも昭和初期という時代の探偵小説は、謎解きよりも怪奇趣味、猟奇趣味が先行しがちで、これを称して変格とも呼ばれたわけだが、渡辺啓助の場合、正にその変格の道を歩み続けた。ときに「悪魔派」などと称されたように、彼の描く登場人物たちの多くは、何らかの特殊な性癖や思想に囚われた者ばかりだ。そんな囚われ人がいつしか限界点を超え、悲劇を招いてしまう瞬間を、渡辺啓助はいくつもの作品をとおして見せてくれるのである。
特別、美文というわけではないが、首つり死体やミイラ、偽眼の美女など、インパクトのあるモチーフを使って読者に鮮烈なイメージを与え、作品世界に誘導することに成功している。
また、作品の当たりはずれが大変少なく、高いレベルで粒がそろっているのも素晴らしい。きれいにまとまりすぎて、逆に物足りなく感じることもあるぐらいなのだが、そんななか、「血蝙蝠」の存在は貴重だ。どう考えても構成的に失敗している作品で、おそらく本書のワースト。しかし、こういう作品を読むと、逆に「ああ、読んでよかった」と思えるから不思議だ(笑)。ま、とにかくオススメの一冊ということで。
「偽眼のマドンナ」
「佝僂記」
「復讐芸人」
「擬似放蕩症」
「血笑婦」
「写真魔」
「変身術師」
「愛欲埃及学」
「美しき皮膚病」
「地獄横丁」
「血痕二重奏」
「吸血花」
「塗り込められた洋次郎」
「北海道四谷怪談」
「暗室」
「灰色鸚哥」
「悪魔の指」
「血のロビンソン」
「紅耳」
「聖悪魔」
「血蝙蝠」
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「タンタラスの呪い皿」
「決闘記」
ちなみに創元推理文庫で出る出ると言われ続けている実弟、渡辺温の作品集はどうなったんだ?
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別にベストセラーを狙うわけではないので、売るための企画はいろいろあると思います。
むしろ肝心なのは、そうやって読んだ後、興味を継続させることなので、そこに珍しい作品を入れるのではなく(それは論創ミステリ叢書の役目です)、探偵小説を絶対好きになる傑作&定番を揃えておきたいわけです。
個人的には「日本探偵小説全集」をさらにライトにした感じ。あれも入門向けとしては悪くないのですが、それでも探偵小説初心者にはちょっと重いんですね(物理的にも内容的にもイメージ的にも)。
探偵小説マニアも最初からヘビーな探偵小説を好んで読んでいるわけではありません。彼らがなぜ探偵小説を読むようになったか、そのあたりにヒントがあるような気がします。