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矢崎存美『刑事ぶたぶた』(徳間デュアル文庫)
ぶたぶたのイメージが強く残っているうちに、と思い、続編の『刑事ぶたぶた』を読む。
連作短編集だった『ぶたぶた』とは異なり、本作は何と長編の刑事物、しかも複数の事件が平行して描かれる、いわゆるモジュラー型の構成である。まあ、だからといって本作がミステリというわけではないのだが、著者が警察小説のスタイルをしっかりと押さえていることにまずはニンマリ。こういうミステリのお約束を知っているのといないのとでは、やはり面白さの質も違ってくる。
さて、肝心の本編だが、語り部を新米刑事の立川青年に据え、配属先でベテラン刑事の山崎ぶたぶたとコンビを組むところからスタートする。刑事物などではお馴染みのシチュエーションだが、ベテラン刑事がくまのぬいぐるみという状況に、当然立川刑事は困惑する一方。しかし、ぶたぶたの活躍を目の当たりにするうちに深い敬愛の念をもつようになり、二人で幾多の事件に立ち向かうことになる……というお話。
もちろんミステリ的な興味で読む話ではなく、主眼はあくまで人間である。本作でもぶたぶたを狂言回し的に使うことによって、親子関係というテーマについて掘り下げていっている。二重三重に構築されたそのパターンに、読者は嫌でも自分の親子関係について考えるに違いない。著者の企みはなかなか巧みであり、そして相変わらずの面白さ。
ただ、どうなんだろう。長編ゆえか著者がぶたぶたのキャラクターに踏み込みすぎているのが気になった。あまりやりすぎると、せっかくの「ぶたぶた」という存在が醸し出すミステリアスな空気が薄れ、単なる受け狙いのキャラクターものに成り下がる危険も孕んでいるのではないか。余計なお世話かもしれないが、個人的にはもう少し控えめなぶたぶたが希望である。
連作短編集だった『ぶたぶた』とは異なり、本作は何と長編の刑事物、しかも複数の事件が平行して描かれる、いわゆるモジュラー型の構成である。まあ、だからといって本作がミステリというわけではないのだが、著者が警察小説のスタイルをしっかりと押さえていることにまずはニンマリ。こういうミステリのお約束を知っているのといないのとでは、やはり面白さの質も違ってくる。
さて、肝心の本編だが、語り部を新米刑事の立川青年に据え、配属先でベテラン刑事の山崎ぶたぶたとコンビを組むところからスタートする。刑事物などではお馴染みのシチュエーションだが、ベテラン刑事がくまのぬいぐるみという状況に、当然立川刑事は困惑する一方。しかし、ぶたぶたの活躍を目の当たりにするうちに深い敬愛の念をもつようになり、二人で幾多の事件に立ち向かうことになる……というお話。
もちろんミステリ的な興味で読む話ではなく、主眼はあくまで人間である。本作でもぶたぶたを狂言回し的に使うことによって、親子関係というテーマについて掘り下げていっている。二重三重に構築されたそのパターンに、読者は嫌でも自分の親子関係について考えるに違いない。著者の企みはなかなか巧みであり、そして相変わらずの面白さ。
ただ、どうなんだろう。長編ゆえか著者がぶたぶたのキャラクターに踏み込みすぎているのが気になった。あまりやりすぎると、せっかくの「ぶたぶた」という存在が醸し出すミステリアスな空気が薄れ、単なる受け狙いのキャラクターものに成り下がる危険も孕んでいるのではないか。余計なお世話かもしれないが、個人的にはもう少し控えめなぶたぶたが希望である。
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