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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ポール・アルテ『狂人の部屋』(ハヤカワミステリ)

 今週は仕事が微妙にいろいろとあるのと、体調がイマイチなこともあって、なかなかブログの更新も読書もままならない。月の読了数も久々に十冊をきってしまったが、もう少しテンションを上げていかねば、などと思う日曜の夜。

 テレビがぶっ壊れて一週間が経つが、最低限、代用するものがあるし、特に困ることはないとはいえ、なーんか違いますな。ここでテレビが無駄なものであると達観できればいいのだろうが、俗人としてはやはり大画面の液晶ぐらいはないと人生が物足りないわけである。そもそも仕事も趣味もモニターがないと始まらない生活だしなぁ。


 読了本はポール・アルテの『狂人の部屋』。
 忌まわしき出来事が起こったのはおよそ百年前。ハットン荘で部屋に引きこもっていた文学青年が謎の怪死を遂げ、そしてなぜか部屋の暖炉の前は水びたしに。その呪いが現代に蘇ったのか? 以来あかずの間となっていたその部屋で、現在の領主ハリスは窓から墜落死し、部屋の絨毯はまたもびしょ濡れとなっていた。いったい部屋で何が起こったのか……。

 巷で評判の高いポール・アルテの最新作だが、確かに今まで訳された中では一番の出来であろう。
 本書のミソはもちろん、作中で起こったすべての謎に対して、実にすっきりした解決を見せているところである。本格だから当たり前のことではあるが、とにかく痒いところに手が届く謎解きというか、これにはカーというよりクイーンを連想するほどであった。伏線も恐ろしいほどきっちりと張られており見事の一語。特に予言の謎についてはやられました。
 だが個人的に最も評価したいのは、今までは本格マニア以外にはなかなか喜ばれなかった遊びの部分が、いい意味で薄められていること。今まではどんでん返しを連発しすぎたり、あるいは要らぬオカルト趣味を盛り込みすぎたり、正直、本格オタク的な痛いところも感じられた。それがここまできてようやく肩の力が抜けたというべきか、過剰な演出に頼らないだけのレベルに達した証しともいえるだろう。これこそ万人が楽しめるミステリ。おすすめ。

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Comments

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いらっしゃいませ。
こちらは活字オンリーのいたって殺風景なブログですが、気が向いたら読んでやってください。
ちなみに私もクイーンもカーも大好きですが、
BCRもかなり好きですよ。
それこそリアルタイムで楽しんでいた世代なので(汗)。
今でもカラオケで歌ったりしてます(^_^;)

Posted at 00:11 on 07 04, 2007  by sugata

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こんにちは♪
この度は、御訪問ぃただきありがとうござぃます。
拝見させてぃただきました。
そして、その読破数にびっくり!
がんばってくださいネ。

わたしは「エラリィ・クイーン」「ディクスン・カー」が大好きで、現在収集中です。
中でも・・・
カーの「皇帝の嗅ぎ煙草入れ」クイーンの「ギリシャ棺の秘密」。この2作品がよかったです。

ではでは、また寄らせてぃただきます。



Posted at 09:09 on 07 03, 2007  by DORN

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[ポール・アルテ][★★]『狂人の部屋』

狂人の部屋 作者: ポール・アルテ, 平岡敦 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2007/06 メディア: 単行本  面白かったー。久しぶりに骨のある本格ミステリを読んでしまった! という気分。堪能堪能。感想はこちら。 もう、最後のツイスト博士による解決が凄まじいのだ。パ

Trackback from 雲上四季  09 03, 2007  00:07

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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