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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ローレンス・ブロック『快盗タナーは眠らない』(創元推理文庫)

 台風と三連休が重なり、レジャー関係者と選挙関係者はさぞや頭が痛いだろうなぁ。こちらは三連休明けから仕事がかなり立て込むため、この三日間はできるだけおとなしくして、鋭気を養う予定。
 テレビを買い換えたこともあって、ゲームやDVDも少し仕入れたし(ちなみにゲームは『ドラゴンクエストソード』、DVDは『そして誰もいなくなった』)、引きこもって楽しむ予定である。あ、読書はもちろんですが。


 読了本はローレンスブロックの『快盗タナーは眠らない』。マット・スカダーやバーニイ・ローデンバーの前にブロックが書いていたシリーズ、エヴァン・タナーものの第一作である。一応はスパイものになるのだろうが、いやいや、なかなかに変な話であった。

 主人公のエヴァン・タナーは戦争の後遺症でまったく眠ることができなくなったという特徴を持つ。その浮いた時間であらゆる外国語を習得、さらには様々な世界中の組織と人脈を作り、知識を蓄えた男だ。その彼がニューヨークで出会ったアルメニア人からトルコに隠された一大財宝の在処を聞き、財宝奪取を目指すというストーリー。

 先ほど変な話と書いたけれども、それは本作が結果的に、当時流行していたスパイもののパロディとして成立しているからだ。タナーはトルコに入国したもののCIAのスパイと疑われて強制退出させられ、途中アイルランドで護送警官を振り切ることに成功、そしてヨーロッパ各国の独立組織の助けを借りながら、再びトルコを目指すのである。全編ほぼその道中のエピソードであり、とにかくストーリーが完全に破綻しているというか超適当である。ブロックが最初からスパイもののパロディとして書いた可能性は高いのだが、柳の下のどじょうを狙ったものがたまたまおかしな方向に流れてしまった可能性もまた捨てがたいと思う。
 で、困ったことにこれがまた面白いのだ。発表年は1966年と、ブロックとしてはかなり初期の作品になるのだが、すでに淡々というか飄々というか、ブロックおなじみの語り口はほぼ確立しており(ただ、これは翻訳者のお手柄かもしれない)、それがこの破天荒なストーリー展開をある意味シュールに見せており、何ともいえないユーモアを醸し出している。
 思ったほど主人公のキャラクターが立ってないのが少々残念だったが、これはシリーズ第一作というせいもあるかもしれないので、今後に期待したい。というわけで、残りの作品もすべて翻訳希望。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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