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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ロバート・B・パーカー『ダブルプレー』(早川書房)

 本日は抜歯の日。以前に虫歯の治療をした親知らずの詰め物がとれてしまい、虫歯も再発しているということで、結局抜くことになったのだ。抜歯自体は意外に早く終わったが、けっこう鈍痛が続いてブルー。皆さんも歯は大切に。


 ハードボイルド界の第一人者といってよいだろう。ロバート・B・パーカーは、強いアメリカ、正しいアメリカを擬人化したようなキャラクター、つまりスペンサーを創造し、そのシリーズで好評を博してきた。さすがにデビュー以来30年以上も続いているのでマンネリ感は拭いようもないが、スペンサーの言動は今もってブレもなく、直接的に心に訴えるようなパワーは認めなければならない。
 問題は、パーカーがどんなテーマの物語を書こうが、どんな主人公を描こうが、どれも同じような印象しか残らないという点だ。要はすべてがスペンサー・シリーズの亜流にしか思えないのである。

 本日読んだ『ダブルプレー』は、そのパーカーが発表したノン・シリーズ作品。メジャーリーグの史実をネタにした異色のハードボイルドだ。
 大リーグ初の黒人プレイヤーとしてデビューしたジャッキー・ロビンソン。覚悟していたこととはいえ、プレイ中でも球場の外でも悪質な嫌がらせを受ける始末だった。そこにボディガードとして雇われたのが、ジョゼフ・バーク。第二次大戦によって身も心もボロボロになって帰還したが、ボクシングを学び、裏社会の仕事で再起した男だった……。

 ううむ。やはりスペンサーもののアレンジという印象は拭えない。バークとジャッキーの会話はスペンサーとホークのそれを連想させるし、おしゃべりと寡黙という違いはあるにせよ、バークの自信に満ちた言動はスペンサーそっくりだ。心に深い傷を持ち、それを押し隠しているキャラクターのはずなのに、ただの自信満々の男にしか思えないのは、パーカーの単なる好みなのか、それとも限界なのか。
 ただ、スポーツ界における人種差別というテーマは魅力的だし、パーカーの描きたかったことは非常によくわかる。わかるのだが、アプローチが浅いのがなんとももったいない。
 パーカーが書いたと言われなければ、もう少し甘い評価でもいいのだが……。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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