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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選II』(論創ミステリ叢書)

 論創ミステリ叢書から『黒岩涙香探偵小説選II』を読む。まずは収録作から。

「幽霊」
「紳士の行ゑ」
「血の文字」
「父知らず」
「田舎医者」
「女探偵」
「帽子の痕」
「間違ひ」
「無実と無実」
「秘密の手帳」
「探偵談と疑獄談と感動小説には判然たる区別あり」(随筆)
「探偵譚について」(随筆)

 昨年に『黒岩涙香探偵小説選I』の方を読み、「無惨」などの一、二作を除くと全体的にはミステリ色が弱く、やや物足りない思いをしたのだが、本書の場合はけっこうミステリ的な作品が多く、思いのほか楽しむことができた。例えば「紳士の行ゑ」では保険詐欺という当時としてはかなり珍しい素材を扱っているし、「血の文字」はなんとダイイング・メッセージものだ。しかも終盤にひねりを加えているところなど、なかなか本格風味で面白い。他にも「帽子の痕」「秘密の手帳」などが比較的ミステリ度が高く、それなりに工夫がされている。『I』を読んでから涙香の神髄は長編にありと思っていたのだが、少し考えを改めなくてはならないだろう。

 なお一応書いておくと、涙香の作品は文語体である。日本探偵小説界の祖といってもよい涙香の作品がいまほとんど読まれないのは、作品の古さもあるだろうが、この文語体であるということが大きいだろう。もちろん最初は読みにくい。ただ、一文ずつしっかり読んでいけば意外と普通に読めるもので、そうそう難しい言葉や言い回しが出てくるわけでもない。基本的には慣れの問題であり、ましてや涙香の場合はやや講談チックなせいもあって、テンポもよい。食わず嫌いせずに、とりあえず読んでみて、といいたい。この時代の探偵小説にしかない味もあるのだ。

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Comments

Edit

なんせ黒岩涙香ですから、無理にオススメするような作家ではないのですが(笑)、意外に面白いんですよ、これが。読みやすさだけでいったら、森鷗外とかよりも全然楽ですしね。
そのうちにちくま文庫で出た『明治探偵冒険小説集』も感想をアップする予定ですのでよろしく。

Posted at 23:32 on 08 19, 2007  by sugata

Edit

そうですね。涙香は最初は読みづらいけど、慣れると文章のリズムが良くて、この時代の探偵小説にしかない味わいがあるというのは私も思いました。と言っても創元推理文庫に入っている「無惨」と「血の文字」しか読んだことないんですけど(^^; そのうち論創社にも挑戦してみようと思います。

Posted at 20:34 on 08 19, 2007  by Sphere

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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