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 河出の本格ミステリコレクションから『楠田匡介名作選 脱獄囚』を読む。
 楠田匡介といえば、ネット・オークションなどで常に高値を叩き出す人気作家の一人であり、著書のほとんどが入手困難本。いくつかのアンソロジー収録作を除けば、唯一、手軽に読めるのがこの『楠田匡介名作選 脱獄囚』なのである。なんと全収録作が脱獄をテーマにした短編集である。

「破獄教科書」
「沼の中の家」
「法に勝つ者」
「上げ潮」
「獄衣の抹殺者」
「朱色」
「脱獄を了えて」
「愛と憎しみと」
「熔岩」
「ある脱獄」
「脱走者」
「不良少女」
「不良娘たち」
「完全脱獄」

 戦後間もなくしてミステリに手を染めた楠田匡介は、通俗的ミステリを量産しつつも、同時に物理的トリックにも興味を示し、すぐれた本格短編を残している。そしてその通俗的ミステリを書くことで培われたストーリーテリングと、トリックメーカーとしての才が見事に結実したのが、本書に収められた「脱獄もの」なのだ。勝手な想像ですが(笑)。
 でも実際の話、主人公たちの人物造形、その背後にあるドラマ、加えて脱獄テクニックという要素がここまで高いレベルで融合していることはかなりの驚きであり、しかもそれが短編集を構成できるほど数が揃っていることはもはや奇跡的である。
 どの作品も十分すばらしいが、特に気に入ったのは「破獄教科書」。脱獄の師匠から手口を習いながら脱獄計画を進めるという話で、師匠が良い味を出している。オチも予想はできるがなかなか見事。ちなみにこの師匠の白取というのは、当然実在の脱獄王「白鳥由栄」がモデルなんだろうな。
 他では、トリックの鮮やかさに加え、最後の対決シーンが圧巻の「法に勝つ者」、類を見ないアリバイトリックと、そのアリバイが崩れ去る理由がなんとも皮肉な「完全脱獄」あたりが好み。
 とにかく本書は必読。ぜひ絶版になる前に読んでほしい一冊である。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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