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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


マイケル・ボンド『パンプルムース氏と飛行船』(創元推理文庫)

 ずいぶん陽気の方も落ち着いてきたというか、本日なども非常に爽快な秋晴れ。こんな日には当然家族サービスということで、近所の昭和記念公園へ。本日の目玉は、園内に昭和の田園を再現した「こもれびの里」(なんと本日オープン)、そして毎年恒例のコスモス祭り。絶好の行楽日和の中、たっぷりと秋の景観を堪能した一日でありました。


 読了本もそんなのんびりムードを引きずって、肩の凝らないものを。マイケル・ボンドの『パンプルムース氏と飛行船』である。元パリ警察の名刑事にして、グルメガイドの覆面調査員、パンプルムース氏の活躍としては五冊目にあたる本。

 本日のパンプルムース氏の任務は特別だ。なんと英仏間に就航する飛行船のVIP用特別メニューを考えなければならないのである。さっそく愛犬ポムフリットとブルターニュに向かったパンプルムース氏だが、サーカスの美女、食事の不味いホテル、怪しい尼さんらと遭遇して大混乱。あげくの果てには飛行船の試乗では船酔いでさんざんな目に。そんな中、飛行船に関わる陰謀が秘かに進められていた。

 『くまのパディントン』の作者として有名なマイケル・ボンド。パディントンが子供のための童話なら、パンプルムース氏の活躍は大人のための童話である。ただし、子供のための童話であればなにがしかの教訓などが含まれているのだが、こちらは教訓などまるでなし。それどころか様々な誘惑がパンプルムース氏を襲い、同時に読者もまた悪癖に誘われる。そう、美味しいものやキレイな女性なくして、何のための人生か、というわけだ。
 このシリーズはもちろんミステリではあるけれど、事件の方は言ってみればおまけにすぎない。むしろ数々の誘惑に負け続けるパンプルムース氏の活躍が楽しければ、それでよいのである。そういう意味では、本書でのドタバタはいい線をいっているし(特にゴム女とのエピソードは傑作!)、グルメ系蘊蓄も十分で、暇つぶしには相当強力な一冊であるといえるだろう。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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