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 ジョゼフ・ウォンボーの『ハリウッドの殺人』を読む。つい先頃ポケミスで似たようなタイトルの『ハリウッド警察25時』が出たばっかりだが、あちらは2006年に刊行された最近の作品。本書はなんと1981年の刊行であり、比較的初期の作品である。
 両者はタイトルだけでなく、内容もまた似ている。どちらもハリウッドで働く警察官たちのドラマであり、新刊の『ハリウッド警察25時』を読む前に、こちらで少し予習してみた次第。

 ハリウッドにある大企業の映画部門の社長ナイジェル・セント・クレアが、ボウリング場の駐車場で何物かに殺されるという事件が起こった。捜査にあたるのは、一応上司から腕利きと思われているマッキーとウェルボーンのコンビ。しかし、不幸なことに二人の私生活は充実しておらず、なかなか捜査にも身が入らない。そんななか、所轄内のあちらこちらで起こる他の事件に、セント・クレア殺人事件との共通点らしきものが見え始める……。

 一応ストーリーは紹介したがそれほど凝ったものではない。それもそのはず。著者のジョゼフ・ウォンボーの目は、物語や事件の謎もさることながら、腐敗したハリウッドの映画産業や警察機構の在り方、そして何より警察官たちの生き様により向けられているのだ。これはもちろんウォンボーが元警察官であり、しかも警察引退後は作家として映画業界にも関わってきたからに他ならない。
 物語の前半は特に鮮やかだ。主人公のコンビ以外にも、筋肉自慢の野獣刑事コンビや犯罪者のような風体の麻薬捜査官コンビ、主人公コンビに捜査を取りあげられて腐っているコンビなど、個性的な警察官たちが次々と登場する。ウォンボーは彼らの捜査の様子、過去に体験した事件、そして私生活をごた混ぜにして紹介していくわけだが、それらのエピソード一つ一つが見事に短編小説の趣を醸し出している。しかも面白い。決してテクニックのある作家ではないと思うのだが、描写が実に丹念で、キャラクターがまさしく生きているのである。

 彼らはどこにでもいる警察官で、決して特別優秀なわけではない。私生活もどちらかというと荒んでいる。しかし警官としての誇りは忘れてはいない。著者は警官の生々しい現実を読者の前にさらけ出すと同時に、愛情もまた十分に注いでいる。だからこそストレートに伝わる力をもった、素晴らしい物語が書けるのだ。
 正直、本書のラストはかなり切ないが、読後にはしっかり、明日があるさという気分になってくる。これこそがウォンボーの真骨頂ではないだろうか。

 悲しいかな、ジョゼフ・ウォンボーの著作は『ハリウッド警察25時』以外はすべて絶版のはず。古本屋で見かけたら買っておいて損はない。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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