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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ダフネ・デュ・モーリア『破局』(早川書房)

 先月が期末で案の定後半はばたばた。他の仕事もなぜか同時にピークを迎えて、先週は月曜から木曜までずっと午前様という始末だったが、ようやく落ち着きを取り戻しつつある。

 ダフネ・デュ・モーリアの『破局』を読む。改装版異色作家短編集、目玉のひとつ。個人的には『レベッカ』よりも短編集『鳥』でこの人の凄さを認識したこともあるし、第一、これまで古書でゲットする機会がなかったので、喜びもひとしお。
 収録作は以下のとおり。

The Alibi「アリバイ」
The Blue Lenses「青いレンズ」
Ganymade「美少年」
The Archduchess「皇女」
The Lordly Ones「荒れ野」
The Limpet「あおがい」

 異色作家短編集の楽しみといえば、鮮やかなオチとか心理的な恐怖、といったものがメインになろうかと思われるが、デュ・モーリアの作風は、それらの要素とは似ているようでまた少し異なった趣がある。
 「あおがい」などは特にその傾向が顕著で、主人公の奇妙な疎外感とでもいおうか、屈折した心理が怖いような可笑しいような、微妙なタッチで語られる。その他の作品も、おおむね主人公と周囲のズレを描いたものが多く、作品世界の持つ不安定感(不安感ではに)が魅力ともいえるのではないか。
 とにかく期待に違わぬハイレベルの作品集。おすすめ。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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