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 リチャード・ニーリィの『愛する者に死を』を読む。『心ひき裂かれて』や『殺人症候群』『オイディプスの報酬』といったトリッキーな作品でその名も高いニーリィだが、本書はそんな彼が1969年に書いたデビュー作である。こんな話。

 業績不振に悩む出版社の社長、マイクルの元に、奇妙な手紙が届けられた。P・Sと名乗るその手紙の送り主は、殺人の実行を宣言しており、その顛末を出版しないかというのだ。マイクルはその話にとびついたものの、彼を待っていたのは死体と、周到に計画された罠であった……。

 愛する者に死を

 いやいや、三つ子の魂百までというが、ニーリィはデビュー作からこういうことを考えていた人なのだ。本書で初めてニーリィに接した人は、このサービス精神にちょっと驚くかもしれない。サプライズに次ぐサプライズ、やや過剰なお色気シーン、変にダラダラせずピシッと簡潔にまとめる構成。何より1969年の作品であるにもかかわらず、すでに昨今のサイコ・スリラーの原型ともいえる結構を備えているところはさすがである。
 ただし、後の『心ひき裂かれて』などに比べると、完成度という点では残念ながら一枚も二枚も落ちる。特にいただけないのは、サプライズありきゆえの強引な犯人像とそのトリック。上で褒めておいたくせにこういうのも何だが、やっぱり無理がありすぎる(笑)。本格至上主義の人はこういうの許せないんじゃないか(笑)。
 また、あまりハッキリと主人公を設定していないのは、ラストの盛り上がりとサプライズのためには必要だったと思うのだが、全体のサスペンスという点では逆にかなりマイナスになっているのが残念だった。
 とりあえずニーリィを読むなら、まずは角川文庫の諸作品であり(特に『心ひき裂かれて』は必読)、本書はそれからでも十分だろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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