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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

佐藤祐市『キサラギ』

 映画公開のときから気になっていた『キサラギ』を、ようやくDVDで観ることができた。

 自殺したグラビアアイドル「如月ミキ」の一周忌にファンサイトを通じて集まった5人の男を描いた作品。全編のほとんどが一つの部屋の中で進行する密室劇、しかもそのアイドルの死に絡む謎が徐々に明らかになってゆくという、実にミステリ的風味満載の物語である。

 で、これがなかなか良くできていて、ネタそのものはちょっとしたミステリファンならお馴染みのものばかりであるが、そのつなぎ方というか盛り込み方が巧い。会話や設定のひとつひとつがほぼ伏線だらけといってもよく、名作『十二人の怒れる男』を彷彿とさせるといったら言い過ぎだろうか。

 導入部分、そしてラストのプラネタリウムのシーン以降の演出が過剰すぎて、そこが実に不満なのだが、そこにさえ目をつぶれば、これはもう十分傑作である。邦画でこれだけミステリマインド溢れた映画を観たのはいったい何時以来だろう。オススメ。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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