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 少年探偵・春田龍介のせいで、もう少しこの手のものを読みたくなり、仁木悦子の『子供たちの探偵簿1朝の巻』に手を出す。
 すべて小学五、六年生が主人公だが、春田龍介シリーズと大きく異なるのは、彼らがごくごく普通の子供たちであるということ(ま、当たり前ですが)。偶然に巻き込まれた事件のなか、彼や彼女はほんの少しの勇気と知恵を振り絞って、事件を解決に導いてゆく。収録作は以下の十編。

「かあちゃんは犯人じゃない」
「誘拐犯はサクラ印」
「鬼子母の手」
「恋人とその弟」
「光った眼」
「銅の魚」
「夏雲の下で」
「石段の家」
「うす紫の午後」
「穴」

子供たちの探偵簿1朝の巻

 何より特徴的なのは、いずれの作品も子供たちの一人称で語られること。そしていずれの作品も完全な大人向けの作品であるということだ。著者が意識的に始めたこのスタイルは、数々の童話の創作もこなしてきた著者ならではの技法であり、真相をうまくカモフラージュする効果と、独特の作品世界を確立させる二重の効果を上げている。
 各作品の出来のムラが少ない点もポイントが高いところだが、読んでいるうちにある種のパターンみたいなものも感じられる。これは決してマイナス要素ではなく、そのパターンに慣れてきたところでドカンと来る「うす紫の午後」みたいな作品があるから、ほんとに油断できないのである。本書は万人におすすめできる良質の短編集。いいぞ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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