- Date: Sat 26 01 2008
- Category: 国内作家 大下宇陀児
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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大下宇陀児『子供は悪魔だ』(講談社ロマンブックス)
まったく個人的なことだが、本日、ようやく、ようやくにして、あの探偵小説誌『幻影城』をコンプリートすることができた。やっほーい。
リーチがかかっていたのはNo.18、すなわち増刊号の『横溝正史の世界』。これがまたエッセイや評論、作品事典など、内容盛り沢山のいい本であり、古書店やネットでも比較的見かける本だから〆の一冊としては最適、と思ったのがもう二年ほど前のこと。そこからが実に長かった……。まあ、あまり高く買うのも嫌だったのでずっと我慢はしてきたのだが、今日たまたま入った古書店で、ラーメン+ギョウザ3人前ぐらいの値段で見つけ、思わず購入。ああ、今日は酒がうまいぜい。

本日の読了本は大下宇陀児の『子供は悪魔だ』。題名に「子供」とついてはいるが、さすがにこれはジュヴナイルに非ず。少々長めの短編、「子供は悪魔だ」「売春巷談」「山は殺さず」「百舌鳥」、以上の四作を収めた短編集である。
政治家の汚職から若者の乱れた風潮まで、当時の社会問題などを取り上げつつもその筆はかなり通俗的で、読み物としてはなかなか面白い。ただし探偵小説としての結構は備えているけれども、トリック等は例によって腰くだけなので、あくまで当時の風俗や人物描写などを中心に古い探偵小説の雰囲気を楽しむのが吉であろう。出来そのものは先日読んだ『おれは不服だ』よりは上。
「子供は悪魔だ」は、莫大な財産を手にしたがため、ろくでもない子供たちばかりを抱えることになった男の悲運を描く。五人兄妹それぞれのごくつぶし振りが多様で、時代は変われどありそうな話ではある。結末は肩すかしといえば肩すかし、皮肉といえば皮肉。
「売春巷談」は売春婦が主人公の物語。前半は彼女たちのエピソードばかりがつづられ、そんな話なのかと思ったら、後半はちゃんとした本格探偵小説的に展開し、このギャップがまず面白い。一応密室的トリックを用いているところもオオッと思わせるが、残念ながらこちらはいまひとつ……というか作中の説明はまったく説明になっていない気がする(笑)。でも宇陀児だから許す(爆)。
「山は殺さず」は雪山で死んだ若者の事件が発端となり、過去に起こった誘拐事件にまで連なるという物語。書く人が書けば相当に壮大な話になるはずだが、これを非常にサラッとまとめているのが大下宇陀児ならでは。だが誘拐事件にも一種の密室のような状態を設定するなど、アイデアは悪くない。これはしっかり書き込んで長編にしてもよかったのではないかなぁ。
「百舌鳥」は三角関係にある男女が挑む犯罪とその心理を描く。主人公の小鳥好きという設定をうまく活かしており、ラストはそれなりにグッと来る。本書の中では最も謎解きから遠い位置にある作品だが、読み応えは一番。
リーチがかかっていたのはNo.18、すなわち増刊号の『横溝正史の世界』。これがまたエッセイや評論、作品事典など、内容盛り沢山のいい本であり、古書店やネットでも比較的見かける本だから〆の一冊としては最適、と思ったのがもう二年ほど前のこと。そこからが実に長かった……。まあ、あまり高く買うのも嫌だったのでずっと我慢はしてきたのだが、今日たまたま入った古書店で、ラーメン+ギョウザ3人前ぐらいの値段で見つけ、思わず購入。ああ、今日は酒がうまいぜい。

本日の読了本は大下宇陀児の『子供は悪魔だ』。題名に「子供」とついてはいるが、さすがにこれはジュヴナイルに非ず。少々長めの短編、「子供は悪魔だ」「売春巷談」「山は殺さず」「百舌鳥」、以上の四作を収めた短編集である。
政治家の汚職から若者の乱れた風潮まで、当時の社会問題などを取り上げつつもその筆はかなり通俗的で、読み物としてはなかなか面白い。ただし探偵小説としての結構は備えているけれども、トリック等は例によって腰くだけなので、あくまで当時の風俗や人物描写などを中心に古い探偵小説の雰囲気を楽しむのが吉であろう。出来そのものは先日読んだ『おれは不服だ』よりは上。
「子供は悪魔だ」は、莫大な財産を手にしたがため、ろくでもない子供たちばかりを抱えることになった男の悲運を描く。五人兄妹それぞれのごくつぶし振りが多様で、時代は変われどありそうな話ではある。結末は肩すかしといえば肩すかし、皮肉といえば皮肉。
「売春巷談」は売春婦が主人公の物語。前半は彼女たちのエピソードばかりがつづられ、そんな話なのかと思ったら、後半はちゃんとした本格探偵小説的に展開し、このギャップがまず面白い。一応密室的トリックを用いているところもオオッと思わせるが、残念ながらこちらはいまひとつ……というか作中の説明はまったく説明になっていない気がする(笑)。でも宇陀児だから許す(爆)。
「山は殺さず」は雪山で死んだ若者の事件が発端となり、過去に起こった誘拐事件にまで連なるという物語。書く人が書けば相当に壮大な話になるはずだが、これを非常にサラッとまとめているのが大下宇陀児ならでは。だが誘拐事件にも一種の密室のような状態を設定するなど、アイデアは悪くない。これはしっかり書き込んで長編にしてもよかったのではないかなぁ。
「百舌鳥」は三角関係にある男女が挑む犯罪とその心理を描く。主人公の小鳥好きという設定をうまく活かしており、ラストはそれなりにグッと来る。本書の中では最も謎解きから遠い位置にある作品だが、読み応えは一番。
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ただ、一冊300~500円あたりでコツコツ集めていったところは自分をほめてあげたいですが(苦笑)。
なお嫁さんは古い探偵小説に一切興味がない人なので、幸い家事はやってくれてます(笑)。