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判事とペテン師

 ヘンリー・セシルの『判事とペテン師』を読む。こんな話。

 とある法廷で裁かれようとしているのは、競馬の賭け屋の事務所に勤めた若き娘ルーシー。彼女は不正入手した情報により馬券を買っていたと訴えられていた。ところが彼女の情報源とは、実は牧師の父親ウェルズビイであった。血統を重視する長年の研究の成果により、牧師の予想は絶対だというのだ。判事チャールズはその真偽を確かめるべく、牧師に今週のレースの予想をたてさせたところ、正に百発百中。娘は無事に釈放される。それからしばらくのこと、判事のもとへ金に困った息子マーティンが現れ、事態は思わぬ方向へ……。

 『法廷外裁判』や『メルトン先生の犯罪学演習』で有名なヘンリ・セシルだが、その作風は法廷もの+ユーモアという独特のものだ。本書でもそのスタイルはきっちりと守られている。とりわけユーモアという部分に関しては、いちいちくすぐりを入れてなかなか面白い。判事が金に困って牧師を訪ねる場面、判事が競馬で熱くなる場面、マーティンの詐欺講座、法廷でのやりとり等、読みどころは確かに多い。
 というか、むしろ本書はそんな読みどころだけを重ねて作られた構成なのだろう。ただ残念なことに、それがそのまま本書の欠点にもなっている。ストーリー上で重要な話があっても、それは読みどころではないとばかり、作者はエイヤとばかりに説明を大幅にカットする。したがって通しで読むとエピソードのつながりやバランスが悪く、下手をすると梗概を読んでいる気分になることもしばしば。また(敢えてやっている節も見られるが)ハッキリした主人公というものを設定しておらず、これもバランスの悪さを助長している。判事親子により重きをおいて書けば、もっと評価されるべき作品になったはずだ。惜しいなぁ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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